ゼノブレイド3:没入感の高い探索と問題を抱えた物語、最高傑作には未だ届かず

2022年7月29日、任天堂/モノリスソフトが贈る大作JRPGシリーズ、ゼノブレイドシリーズの最新作であるゼノブレイド3が発売された。この記事は、ゼノブレイド3のネタバレなしクリアレビューとなる。

ゼノブレイド3とは

ゼノブレイド3はいわゆるJRPGと呼ばれるジャンルの作品であり、プレイヤーが自らの目的のために広大な世界を仲間と旅し、人々と出会い、敵やモンスターと戦い、成長し、目的を遂げる様を疑似体験するものだ。フル3D化された世界、エリア制だが広大なシームレスフィールド、リアルタイムコマンドバトルを採用しており、SFCのRPG黄金時代の作品を現代的に進化させたような作品と言える。この作品の特徴は数多いが、それを語るにはゼノブレイドシリーズから説明した方が良いだろう。

ゼノブレイドシリーズ

ゼノブレイドシリーズの起源は、スクウェアでFF7の候補の1つとして開発され、1998年に発売された「ゼノギアス」にまで遡る。売上はそこまで大きくはなかったものの、独自の魅力的な世界とキャラクター、物語が高い評価を得て、後に続編として「ゼノサーガ」3部作が発売されている。

ゼノサーガは賛否が大きく分かれ、開発会社が任天堂に買収されたことでシリーズは終わりを迎えたものの、その世界観を受け継いだ王道RPG「ゼノブレイド」が任天堂から発売され、世界的にも非常に高い評価を得ることとなった。続いてオープンワールドRPGに舵を切り、没入感の高い探索ゲームプレイと問題のあるキャラクター・物語で賛否が分かれた「ゼノブレイドクロス」、初代ゼノブレイド路線に戻り一定の評価と高い売上を得た「ゼノブレイド2」を経て、今回ゼノブレイドシリーズの集大成と明言された「ゼノブレイド3」が発売されている。なお、ゼノブレイドシリーズのシステム面での比較は、以下の記事を参照してほしい。

ゼノブレイドシリーズはタイトルによって重視する要素が大きく異なるが、圧倒的な物量、高品質な物語・音楽・演出、魅力的なキャラクター、広大で起伏に富んだ地形、癖の強いリアルタイムコマンドバトル、そしてやや使いづらいUIが特徴だ。ゼノブレイドはすべての要素が高水準でバランスがとれており、クロスは探索・システムに極振り、2はストーリー・キャラを重視、そして3は再びすべての要素で高水準を目指したものだろう。これは、開発陣から「ゼノブレイドの集大成」と言及されたことからも伺われる。

私のプレイ経歴と好み・期待

私はゼノサーガep2、ep3を除いたタイトルをプレイ済みで、ゼノサーガep1は未クリア。シリーズ最高評価は初代ゼノブレイドで、世界観とシステムをやや重視し、物語やゲームプレイがそれらとうまく融合していれば評価が高い傾向がある。例えば、初代ゼノブレイドの世界設定とそれを取り込んだ独特の戦闘システム、キズナシステムを通じた世界とその変化の豊かな描写を非常に高く評価している。

そして私がゼノブレイド3に期待していたのは、ゼノブレイドクロスの素晴らしいマップと初代ゼノブレイドが持つ世界に根ざしたシステム、システムと相互作用する豊かな世界描写、高品質な演出・ストーリーテリング、それらを兼ね備えたゼノブレイドシリーズ最高傑作だ。2でも同じ期待をしていたが、残念ながらそれが叶うことはなかった。

前置きが長くなったが、本題のゼノブレイド3の話に入ろう。私のプレイ状態は、プレイ時間160時間でメインストーリークリア済み、ヒーロークエストを含むサブクエストコンプリート、全クラスの覚醒、全武器の強化、全ジェムLv7まで作成、Lv75程度の状態だ。

各論に入る前に総評を簡単に述べておくが、タイトルでも触れた通り残念ながら最高傑作には届かなかった。序盤~中盤のプレイでは、魅力的で広大な世界、没入感の高い探索、品質の高い音楽と演出、旅を駆動する力のある物語、使いやすいシステム、キャラクターと世界の描写の豊かさを兼ね備え、間違いなくこれはシリーズ最高傑作になるだろうと感じていた。ただ、あちこちで撒かれた伏線や設定が説明不足、もしくは未回収のまま終わってしまった感が強く、物語面での評価は幾分低くならざるを得ず、総合評価もそこに引きずられる形となった

素晴らしい点

サブクエストとキズナグラムが織りなす世界と変化の豊かな描写

2で廃止されていたキズナグラムが復活し、この世界に登場するNPC同士の関係が逐次相関図に登録され、更新されていくようになった。

これにより、1つ1つは採集や討伐のおつかいクエストであっても、有機的に人間関係が変化し、他の人間に派生し、変化が重なって新たな事件が起きてクエストになり、結果としてコミュニティ全体が変わっていく…といった姿が豊かに描写されるようになった。こうしたシステムがもたらす、世界に「居る」という感覚は、探索と合わせて世界への没入感を飛躍的に高めてくれている。

広大で起伏に富んだ地形と没入感の高い探索、利便性の高いマップ

シリーズ最大の魅力である広大で起伏に富んだ地形は健在で、1、2、イーラを融合させることでナンバリングシリーズとしては最高の出来だ。広大な地形、各地に点在する敵対コロニーと緊張を孕む潜入、有機的なエリアのつながり、高レベルモンスターの目をかいくぐる決死の前進、すさまじい高低差と絶景…と、探索のプレイフィールはナンバリングを超え、むしろゼノブレイドクロスの域に近づいており、まさにゼノブレイドシリーズの集大成の名にふさわしい。

2で不評だったマップシステムも改善されて1をベースに様々な改良が加えられており、マッピングの楽しさも復活している。常時表示されるミニマップ、拡大マップに加え、現在エリアのマップ、ワールドマップをショートカットに割り当てることで、エリア間の移動ストレスも大幅に軽減されており、さらにアクティブクエストの目的地をマップ表示するボタンまであり、現地にすぐに飛べるようになっている。目的地までのナビゲーションシステムまで搭載しており、純粋に探索を支援するシステムとしてはほぼ不満の見あたらない優れたものになっている。すべてのランドマークや休憩ポイントを網羅することではじめて全地形が表示されるという配慮もあり、地図の端の取り残しを気にする人にとっても使いやすい。

探索で見つかる各コロニー自体は簡素であるものの、ヒーロークエストによる代表者との融和、パーティーへの参加、成長・覚醒、ヒーローを取り巻くコロニーの仲間とコミュニティの変化がキズナグラムとともに経時的に表現されており、探索の成果・動機としても申し分ない。クロスの異種族コロニー・クエストを2のレアブレイドシステムと融合させた、非常に良く出来たデザインだと感じた。

マップ上に点在するシリーズおなじみのネームドモンスターとの戦いも楽しい。各地にナワバリを持つ種族の長として君臨して生態系を彩るだけでなく、倒せば墓にスキップトラベルも出来るようになり、探索の補助としても機能するようになった。メインストーリーよりもネームドとの戦いが戦闘の本番という人も多いのではないだろうか。


魅力的なキャラクターと関係性の掘り下げ

ゼノブレイドシリーズでは「キズナトーク」という形で各キャラクターを周囲との関係性から掘り下げる会話イベントが用意されてきたのだが、2ではメインキャラクターに関して大幅に縮小された結果、キャラごとの掘り下げが不足していた。レアブレイドについても人数が多すぎて1人1人に割り当てられた物量が少なく、また設定上世界から半ば独立したような存在のためにどうしても描写が浅薄なものとなっていた。

ゼノブレイド3ではキズナトーク自体が廃止されたが、そのかわりに休息地での「相談」を通じて各キャラクターが様々な話題について相互に会話し、キャラクターを多面的に掘り下げることに成功している。メインキャラクターはメインストーリーの各章でもサブテーマとして順に掘り下げられており、十分に魅力を引き出せていたと思う。

各ヒーローも、所属するコロニーと繋がりを持たせることで、ヒーロークエスト・コロニークエストを通して周囲との関係とその変化を描写しており、レアブレイドの単発・浅薄な描写から長足の進歩を遂げている。加えて、マップの特徴的なロケーションではヒーローが随時ボイスで感想を述べる作り込みもされており、キャラクターを多面的に描く一助となっている。

クエストの自然な導入・描写とキャラクターの掘り下げを両立する「相談」

1つ前でも軽く触れたが、本作では各地で収拾した情報やその断片について、休息地(宿営地)で集まって「相談」し、感想を述べ合ったり、クエストとして取り組む、というシステムが導入されている。過去シリーズや他のJRPG作品では、住民に話を聞いたらその場でクエストを受注、報告して終了、という流れがほとんどだったが、この「相談」というフェーズを前後に挟むことで、クエストの導入や受注、事後のフォローがとても自然なものになっている。

流れとしては、コロニーや街で情報アイコン(iマーク)が出ている人の話を立ち聞きしたり聞き込みしたりすると、相談対象として情報やその断片が集まってきて、休息地で相談メニューを選ぶと集まった情報を選んで会話し、種類によっては相談の結果取り組むことが決まってクエストになる、といったもの。また、クエスト完了後のフォローアップの役割も果たしており、後日談について話し合うことも多い。

これまでのクエストシステムでは、街での会話から唐突にクエストを受注したり、クエストの受注、進行、完了の際に無理やりキャラクターが会話を広げたり、逆に限られたキャラクターが事務的に会話をして終わり、というものが多かった。「相談」が導入されたことで、不確かな情報への取り組みの流れが自然になり、各キャラクターの情報・クエストに対する姿勢が描写されるようにもなった。また、クエスト完了後の変化やキャラクターの感想も描かれるており、クエストそのものを深めるだけでなく、キャラクターの内面を多面的に掘り下げるという、まさに複数の問題を1度に解決する優れた「アイディア」となっている。

Switchの限界に迫るグラフィックと変わらず高品質な演出

キャラクターのグラフィックは2からさらに改善され、Switchのこの種のジャンルとしては限界に近いのではないかと思える。フィールドは一見あまり大きな変化はないが、水や海のグラフィックの向上は目立っていた。海全体がうねっており、本当に海にいるように感じられる。

カットシーンの演出も変わらずクオリティが高く、アクションの動きとカメラは従来に続いて素晴らしい出来だ。表情の動きも精緻で、瞳の揺れが微妙な感情を映す様はゲームとは思えないほどだ。ただ、プリレンダではないシーンの動きについてはモーションの不足からか、やや手抜きと感じる部分が増えた気がしなくもない。特に、キャラクターの移動や方向転換については不自然な動きが散見された。

遊びやすくなったシステム

UIが使いづらいことで定評があるゼノブレイドシリーズだが、今作はかなり使いやすくなった。マップ関連については既に述べたが、ショートカットを使って任意のメニューをワンアクションで呼び出せるようになり、自分の重視するプレイスタイルに応じてスムーズな操作が出来るようになった。ちなみに探索がメインの私は、現在地マップ、ワールドマップ、ナビゲーション、クエストリストを設定している。

戦闘参加キャラクターが多く頻繁にクラスチェンジする上、アクセ、アーツ、スキル、ジェムと設定項目が多いため煩雑になりがちなのだが、いつでもワンボタンでおすすめ設定を適用できることで準備の負担も減った。パーティーメンバーが3人から7人に増えたことで、プレイヤーが多少ミスをしても戦況への影響が少なくなり、戦闘自体もボス戦を除けばオート戦闘ができるようになったことで、戦闘が苦手な人にも遊びやすくなった。戦闘システム自体も、2よりはややシンプルになっている。

さらに、2で不評だったチュートリアルの不足、システム説明が1度しか見られないといった欠点を克服し、過剰とも言えるチュートリアル、訓練モードでの戦闘練習追加、TIPSの充実と弱点を積極的に埋めにきている。まだいくつか使いづらい点はあり、後ほど紹介もするが、遊びやすさは相当に向上した。



賛否分かれる点

メインストーリーにおけるムービーの頻度・長さ

メインストーリーはフィールドを歩きながら随時ムービーを挿入する形で展開されており、探索後回しでメインストーリーを追うプレイスタイルの人にとってはあまりにムービーの頻度が高すぎ、ムービーも長すぎると感じることもあると思う。一説によると、寄り道なしのクリア時間40時間のうち、30時間超がムービーだそうだ。

私個人はあちこち寄り道しながらメインストーリーを進めており、ムービーとプレイ時間の比率が大きく異なっていることから、ムービーが頻繁だとか長すぎると感じることはなかった。プレイスタイルによっては注意が必要だろう。

素晴らしいが、使われ方に課題のある音楽

スクウェアの伝説的タイトルを中心に素晴らしい楽曲を手掛け、ゼノブレシリーズでも素晴らしい楽曲を提供し続けてきた光田氏、そして同じくナンバリングシリーズを一貫して手掛けてきたACEは今回も素晴らしい手腕を発揮している。特に篠笛を用いた音楽、要所のイベントで挿入されるボーカルつきの楽曲は素晴らしく、戦闘まわりの音楽もこれまで通り良くできている。フィールドやイベントシーンの音楽はこれまでのシリーズに比べてやや落ち着いているが、煩くなりすぎず、長時間になるゲームプレイを立てる形でうまくまとまっているように感じる。

ただ、今回は特徴的で高品質なイベント音楽が序盤で1~2度しか使われなかったり、マップやメニューを開く度にメニュー音楽に切り替わるせいで探索しながらの移動ではフィールド音楽をほとんど聴くことができず、結果的にあまり耳に残らなかったりと、使われ方の問題からその魅力が伝わりきっていないものが多い。
戦闘音楽も、敵によっては物悲しいものだったり、ユニークならフェーズ移行で少しずつ変わったりと凝っているのだが、強敵で頼りがちなチェインアタックのBGMがすべてを上書きしてしまい、肝心の敵との戦闘でも音楽が耳に残らないということが起きがちだった。

チェインは最悪使わなければ済むが、マップはどうしても開かざるを得ないため、メニューBGMのON/OFFはオプションで設定できるようにして欲しい。

簡易化されたビルド、キャラクター固有要素の不足

このゲームには武器や防具は存在せず、装備品はアクセサリのみだ。また、色々なクラスに変更できるとはいえ、他のクラスを育てても恩恵はそこまで大きくなく、クラスごとに決められた一部のスキルやアーツがマスタースキル・マスターアーツとして他のクラスでも利用できるようになるだけだ。

さらに、このゲームではクラスが二種類の勢力に分かれており、他クラスのアーツに関してはメインクラスと異なる勢力のクラスが持つアーツしか設定できない。このため、多数のクラスを育ててみても思ったよりも恩恵が少なく、ビルドの幅もあまり広くない

例外として「ソウルハッカー」というクラスのみ、クラス単独で複数ロールを切り替えたり、膨大なアーツの中から選んでビルドが出来る。かなり育てるのが大変だが、こだわりたい人はソウルハッカーを育ててみるのも良いだろう。

また、どのキャラクターも制限なく全てのクラスに変更でき、クラスが同じであればキャラクターが違っても性能はほぼ同じため、キャラクター固有の戦闘の特徴や戦い方のようなものはない。例外としてノア(と一応ミオ)のみ固有のタレントアーツがあるために独自の戦い方ができるが、それ以外のキャラクターは全員没個性なのは賛否が分かれるところだろう。

シンプルになったが、大味なバランスブレイカーが水を差すバトル

このゲームはプレイヤーキャラクターがリアルタイムでコマンドを選びながら戦うシステムで、出す位置によって効果が異なる技(アーツ)や、特定のタイミングで効果を発揮するアーツが多いため、位置取りとタイミングを見極めながら戦うことが重要となっている。2ではこれに併走する形で指定の属性で順番に必殺技を当てて玉をつけて割るブレイドコンボという謎のシステムが導入されており、爽快感はあるものの非常に複雑でわかりづらいと言われていた。

3ではブレイドコンボは廃止され、戦闘はややシンプルな形に戻ったが、かわりに融合アーツとウロボロス化が追加された。ウロボロス化は操作キャラとペアが合体して一定時間強力な巨人になる仕組み、融合アーツはクラスが本来備えるアーツと他クラスを育てて得たアーツを同時に放って融合させるもので、使うほどにウロボロス化した際の強さが上がる。

シリーズ伝統の連携攻撃であるチェインアタックも刷新され、パーティーメンバーが出すオーダー(お題)を選び、参加メンバーを選んで達成すると報酬効果が得られて連携回数が伸びる、という数値を計算しながら良い組み合わせを毎度考えていくカードゲームのような仕組みになった。

全体的には適度な複雑さで2より遊びやすくなっており、序盤こそ手持ち無沙汰感が強いものの、中盤以降にアーツ・クイックムーブキャンセルが導入され、使えるアーツの数や種類が増えてくると、スピーディーで爽快になってくる。融合アーツとウロボロスも戦闘のアクセントとして悪くはなく、今作の戦闘も十分面白く仕上がっていると感じた。

ただし、問題もそれなりに残っている。戦闘参加人数が7人になり、多数の敵を同時に相手するシーンも多いことから、敵味方が入り混じって画面がぐちゃぐちゃになり、ターゲットも位置関係もタイミングもまったくわからなくなってしまうことが多かった。ターゲットを選ぼうにもLRで見づらいカーソルを1つずつずらしていくことしかできないため、まともに選択できない。キャラクターに最も近い敵にターゲットを設定するショートカットが欲しかった。

また、中盤以降はチェインアタックがあまりに強くなりすぎ、ゲージを溜めたらこれらを撃つだけでほぼ敵が死ぬようになる。しかし、あまりに大味で長い時間がかかること、アクション性が皆無でゲーム性も激変することから、私はなるべくチェインアタックは使わないようにしていた。それでも、ノアの固有タレントアーツが異常に強く、溜まったら脳死で撃っているだけでだいたいの敵が死ぬようになってしまう。爽快感はものすごいが、戦闘システムとして大味すぎるという感覚は否めない。

加えて、オート戦闘でも雑魚戦の勝利寸前のタイミングですらゲージが貯まるとチェインアタックを発動して長々とオーダー・メンバー選びを始めるため、戦闘が異常に長くなる。オート戦闘でチェインアタックを使わない設定はできないので、チェインを眺め続けるか、手動に切り替えて強制中断するしかない。ここはアルゴリズムを改善するか、オプションでON/OFFを設定できるようにして欲しい。

ソウルハックによるユニーク討伐のモチベートと導入タイミング

ソウルハッカーのヒーローを仲間にし、ソウルハックスキルを設定した状態でユニークモンスターを討伐すると、1種につき1つ、固有のアーツかスキルを覚えてソウルハッカーで使うことができる、いわゆる青魔道士のような仕組みが導入された。これにより、限定的ではあるもののビルドの幅が大きく広がった上、ユニークモンスターを討伐する動機づけにもなっている。

1ヒーロー/クラスのためとしては破格の仕組みで、これ自体は歓迎すべきものなのだが、ソウルハッカーが仲間になるタイミングはゲームの中盤を終える頃で、その頃には多くのプレイヤーはかなりの数のユニークモンスターを討伐済みのはずだ。しかしながら、ソウルハックのためには各地を巡って再度討伐済みのユニークを討伐し直す必要がある。また、本来ならスキルを装備さえしていればソウルハック出来るはずなのだが、不具合のせいかタレントアーツを変更しているとなぜかソウルハック出来ずに終わってしまう。また、ソウルハッカーのヒーロー参加のみではソウルハックできない。面白い要素なのだが、無駄に使いづらくなっているので、もう少し親切にしても良かったかもしれない。

問題のある点

説明不足・未回収の設定や伏線

このゲーム最大の問題点がこれだ。メインキャラクターたちの視点では余韻を残しつつ非常に綺麗に終わっていると思うのだが、問題はプレイヤー、特にシリーズを通してプレイしてきたプレイヤーは彼らと同じ視点ではない、ということだ。

1や2のプレイヤーからすると、それぞれのエンディングの後になぜこのような状態に至ったのか、ミオやセナがマンイーターやブレイドイーターなのはどういう理由なのか、ブレイドはどこへいったのか、全員がブレイド(生命体)なしでブレイド(武器)を出せるのはなぜなのか、なぜあの場所にあのように大剣が刺さっているのか、各地の見覚えのある建物や地形は…と、知りたいことが山程ある。しかし、それらはほぼ語られないまま終わってしまう。下手をすると、アイオニオンの成り立ち上、語る意味すらないという解釈も出来るし、それではあまりに虚しい。そもそもアイオニオンに定められたルールが曖昧だ。

1や2のプレイヤーでなくとも、始祖はどのように生まれ、どういう経緯でウロボロスになり、どういう人生を送ったのか、シティはどのような経緯を辿って現在に至るのか。七鉄巨神とはなんなのか。

詳細まで語れとは言わないし、微かに触れられてはいるものもあり、想像で補える部分はあるにしても、やはり不足しすぎだと思う。後者についてはDLCで語るつもりなのかもしれないが、本編終了時点では消化不良感が大きい

また、エンディングに向けた事前説明も不足しすぎではないだろうか。ゲーム中の説明だけでは、エンディングであのような場面になることを想像できた人はほとんどおらず、むしろ逆の流れを期待していたのではないだろうか。流れが唐突すぎて、感情移入が難しくなってしまった感は否めない。ゼノギアス、ゼノブレイドクロスと唐突な失速・終劇の過去を持つシリーズではあるが、集大成とはそういうことではないはずだ。

魅力の不足した敵役

過去シリーズでは、ザンザ一味、シン、メツと魅力的な敵役が揃っていた。なかなかに人間臭く、背景も語られ、共感はせずとも理解はできる個性的な面々だった。しかし、今回の敵役であるメビウスは違う。相当な人数が登場したが、名前と顔が一致している者は正直片手くらいしかいない。名前がアルファベット1文字で覚えづらい上、顔も隠れ、服装もほぼ同じ、しかもほとんどのメンツが登場して1回か2回話したら戦って退場していくからだ。覚えていられるわけがない。

そして、覚えている数少ないメビウスたちも全員が、魅力的とは言い難かった。例外は仲間になるTくらいだ。特に、最後の敵はその性質上致し方ないとはいえ、あまりに無機質で魅力がなさすぎた。2では味方よりも敵の方が魅力的などと言われたものだが、3で仲間の掘り下げが格段に深まった反面、敵役の魅力のなさはあまりに際立っている。

世界設定の強度の低さ

素晴らしい点でも書いたように、成立したアイオニオンでの世界・社会の描写は素晴らしい。しかし、そもそもアイオニオンがこうして成立した理由・要因に対する説得力が薄い。ネタバレになるので詳しくは書けないが、成立の動機から考えれば、このような世界になるのはおかしい、少なくとも筋の通った説明ができていないように思える。仮にこの世界の自然な成立を前提にすると、別の場所でおかしな部分が出てくる。どうも、語りたいことを前提に細かな辻褄は無視して設定を作ったようにも思えてしまう。ゼノシリーズでは歪んだ、しかし美しい世界の奇妙な成り立ちも魅力の1つであり、世界に浸る前提となる部分なだけに、1と2の世界の後継となる3の世界でこのように感じるのは残念な点だ。

アイテム管理の煩雑さ

UIは全体的にかなり洗練されたが、入手手段の限定されたいくつかのアイテム、ノポンコインとジェムストーンの扱いについては問題を感じる。いずれも通常のプレイでは入手数に限りがあるが、最大所持数が99しかなく、超えた分は自動的に売却されて失われてしまう。そのわりに、最大の使い道が80~99枚必要な交換アクセサリだったりする上、襲われたユニーク戦で突然手に入ったり、二度と戻ってきたくない僻地のコンテナに入っていたりするため、数量の管理が非常に難しい。単純に3桁まで所持できるようにしてくれれば解決するのだが…。

また、膨大なアイテム、特にアクセサリの管理には未だかなり厳しいものがある。おすすめ設定やロールに向いたアクセのマーク表示、ソート等があるが、とにかく数が多すぎるのだ。ノポンコインで交換するアクセを選ぶ際にも、手持ちで似た効果があるか確認したくなったりするのだが、多すぎて上から下から見るだけで時間もかかるし、もはや下まで到達した頃には上の方のことは覚えていない。種別ごとにタブで分けるとかできないのだろうか。



素材・モンスターの場所がまったくわからない

クエストで収拾する素材なら丁寧にアイコンやナビが出るのだが、ジェムやコレペディアカードで集める素材についてはノーヒントで世界中から探さなくてはならない。モンスター図鑑や素材図鑑があればまだマシなのだが、そういったものは一切ないため、このゲームのウリである超広大な世界を彷徨う必要が出てくる。しょうがないのでウェブで検索してドロップモンスターとロケーションがわかっても、地図上にはランドマークしか表示されておらず、ロケーションはわからないため、次はロケーションを探し回る羽目になる。モンスター図鑑、素材図鑑、マップ上のロケーション表示をセットで実装して欲しい。



クラフト素材が休息地以外で確認できない

ジェム合成や料理に必要なアイテムが休息地以外で確認できないのもかなり厳しいものがある。特にジェムは必要なアイテム数が多く、同じ名称のアイテムでもレア度まで合わせる必要があるため、対象モンスターを狩ってそれらしいアイテムがたくさん出たとしても、実際はなかなか揃わない。一応レシピチェックという機能があり、チェックを入れたアイテムが手に入るとお知らせが出たりするのだが、欲しいもの以外を入手しても出る上、作り終わった後にもチェックを外すまでお知らせが出続けるし、外すにもレシピの数が多すぎてチェック場所を探すのも一苦労でまったく利用の手間に見合わない。


テーマと語り口の乖離

「融合」「未来へ進む」といったあたりをテーマにしていると思うのだが、システム面ではうまく実現されているものの、物語の面では異質なもの同士が融合し、未来に進んだ、というようには感じられなかった。肝心のところで融合も共存もできないことはある、それでも自分たちがしたいようにした、綺麗事を口にしながらエゴイスティックに望みを押し通した、という印象は拭えなかった。それはそれで否定されるものではないのだが、言っていることと実際にやっていることがどこか食い違っている、という違和感は残ったままだった。

総評:86/100

Pros:

  • サブクエストとキズナグラムが織りなす世界と変化の豊かな描写
  • 広大で起伏に富んだ地形と没入感の高い探索、利便性の高いマップ
  • 高品質な音楽とカットシーンの演出
  • 魅力的なキャラクターと関係性の掘り下げ
  • 遊びやすくなったシステム

Cons:

  • 説明不足・未回収の設定や伏線
  • 魅力の不足した敵役
  • アイテム管理の煩雑さ

物語の器となるゲームシステムとしてはシリーズ集大成にふさわしく、ほぼ完璧なものが出来上がったが、今度は器を彩る物語の方が不完全だった。終わってみればプレイ感はゼノブレイドナンバリングよりもむしろクロスに近い。しかし、物語の瑕疵を除けばゲームとしての完成度は非常に高く、総合評価では歴代JRPGの最高峰と言える。

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