ついにサードパーティーの支持を得たかに見えるSwitchはどこへ向かうのか


1年目の神ゲーラッシュから徐々に失速し、2年目はスマブラ、3年目はポケモン、4年めはあつ森を特大の花火として打ち上げたものの、その後のソフトラインナップがほとんど枯渇してしまったように見えていたSwitch。これまでは大型のサードパーティタイトルに恵まれず、ほぼ任天堂独力でプラットフォームを牽引してきたが、ここに来て先行きに暗雲が見えてきていた。


突然のラインナップ放出

中盤以降失速したWiiの二の舞もあり得るか…?と思われた今夏の終り、突如マリオ35周年記念として大量のマリオリマスターが発表。これらが間髪入れず次々と発売され、さらに任天堂の面目躍如と言うべきおもちゃと技術の融合体「マリオカートホームサーキット」で衆人の度肝を抜いた。休む間もなく立て続けに「ゼルダ無双厄災の黙示録」を発表、マンネリ感漂う単なる無双コラボをゼルダシリーズ最新作に仕立て上げた。

これにて、秋口に発売されるピクミン3デラックスに加え、桃鉄、太鼓、ダビスタ等の定番サードパーティタイトルとあわせて年末のタイトル不足感は一気に払拭されることになった。

モンスターハンター ライズの衝撃

また、ここにきてカプコンからはモンスターハンターシリーズの本編相当作として「モンスターハンターライズ」が発表、ついでにモンハン世界で繰り広げられるRPGタイトル「モンスターハンターストーリーズ2」も発表された。Switchにとってこれは非常に大きな出来事だ。

近年のゲームタイトルは特定のプラットフォームで独占販売されることが少なく、可能な限り多くのプラットフォームで発売される。しかし、Switchだけは同世代のプラットフォームの中で処理性能が大きく劣るため、マルチ展開から外されることが多く、そうしたタイトルなしでSwitchをここまで普及させてきたのは、任天堂タイトルとインディータイトル、そして中小サードパーティのマルチタイトルだった。

世界販売を見据えたAAAや、それに近いタイトルを数多く販売する大手サードパーティー各社(スクエニ、カプコン、バンナム、フロム、セガ・アトラス)は、Switchに先行して世界で普及したPS/XBox/Steamに対して高品質なゲームを提供することを優先してきており、Switchに対しては前世代機タイトルのリマスターや、評判のイマイチなタイトルを散発的に後発移植する対応に終始し、新作を投入することを避けてきた。こうしたタイトル群は当然Switchユーザーからも敬遠されるため、所謂「売れない実績作り」となってしまい、さらに新作タイトルの供給が進まない…とマイナスのスパイラルに陥っているかのように見えていた。

Switchの絶好調は1年目から既に明らかだったが、同発マルチすら増やさないサードパーティの鈍い動きにSwitchユーザーも当初は「好調が見えてから企画をはじめても開発完了までは3年以上かかる」「既に開発に着手してしまったタイトルの同発マルチ化はスペックの関係上難しい」と静観していたが、2年経ち3年経っても開発予定すら増えない状況を見てサードパーティに対する期待は消え失せ、ファーストタイトルだけで楽しもうと割り切りはじめてすらいた。

遂に目立ちはじめたサードパーティーの注力

しかしながら、頼みの任天堂タイトル群も昨年から今年にかけて弾切れの気配が強まっており、この先のSwitchの展開が危ぶまれてきていただけに、今回のモンハン発表は非常に大きな出来事だった。これで年末商戦はマリオリマスターからマリカホームサーキット、ゼルダ無双でつなぎ、年度末にかけてライズ、その後ライズを無料アップデートでつなぎながら夏にストーリーズ2、そしておそらく来年末にブレスオブザワイルド続編と、来年末までに要石となるタイトルが出揃ったことになる。

TGSでの三國無双からもわかるように、多少無理をしてでもSwitchに対応する姿勢も強くなってきている。いち早く対応したコエテクに続き、EA、カプコンと自社製のエンジンを不完全ながらもSwitchに対応させてきており、Switchタイトルの開発体制は業界としても整ってきてはいる。実際当初の見立てどおり、半信半疑だったSwitchの好調が確信に変わってから始まった企画が、今になって次々と出てきているのだろう。

近年は電撃的な発表から早期の発売につなげるパターンが増えているとはいえ、任天堂の未発売・発表済みタイトルはもはやマニア向けのベヨネッタ3とメトロイドプライム4くらいしか残っていない。ここでようやく主要サードパーティーからのタイトル供給が増えてきたことは、Switchの長寿命化に向けて非常に心強い出来事だろう。サードタイトルで間をつなぎながら、任天堂開発ラインの2周目のタイトル完成を待つことができれば、Switchは余裕を持って次世代までつなぐことができる。

任天堂ハードウェアの次なる展開

任天堂プラットフォームの今後の展開だが、具体的な時期やスペックについてはなんとも言えないものの、近年の任天堂製ハードウェアの慣習に習い、十中八九Switchと互換性を保ったハイブリッドコンソールが発売されるはずだ。この次世代Switchまでの間には、もしかしたらNew 3DSのような強化版も出るかもしれない。JoyConは同じものが使えるかもしれない。アナログスティックのドリフトは修正して欲しいものだが…。

大成功ハードの互換後継機というとWiiUの悪夢が若干脳裏をよぎる部分はあるが、この次世代Switchは、大成功はしないものの、WiiUのような致命的な失敗にもならないのではないかと思う。大成功しない理由は、相変わらずAAAタイトルのマルチ展開が期待できないこと、そして任天堂自社タイトル群がSwitchほどには充実しないだろうことからだ。

Switchで自社タイトルが充実したのは、WiiUが誰の目にも明らかなレベルで早期に失敗したことによる。このため、低迷期間中にSwitch立ち上げに向けたタイトル開発に集中でき、そして誰にも遊ばれることのなかったWiiUタイトル群をSwitch新作としてコンバートできた。Switchが成功し、自社開発ラインをフル稼働してタイトルを放出してきた今、次世代Switchにそのような状況が訪れるとは考えづらい。

反面、サードパーティからは一定の支持が得られるだろうし、強力なSwitchタイトルを遊べることから、大きく沈没することも考えづらい。次世代機が斜陽化するまで、7〜8年近く保つのではないだろうか?

任天堂の真の試練

任天堂の真の試練は、次世代機…Switchスタイルのハードウェアが賞味期限が迎える頃にやってくると思われる。Switch系統の形状で新しい遊びを提案することが難しくなると、任天堂は互換性を捨て、まったく新しいプラットフォームに賭ける道を選ぶ可能性が高い。この時、プラットフォームの立ち上げ時にサードパーティーの助けが得られるかはまったくの未知数だ。

Switchの時のように、確実に頼りにできるのは自社タイトルだけになるだろう。そこまでに開発リソースとクリエイティビティを潤沢な状態で維持できているのか。ここで立ち上げに失敗すれば、任天堂は再びWiiU時代と同じどん底に叩き落されることになる。

他プラットフォームの動向と影響

PSとXBoxは今世代交代を迎えようとしているが、どちらも過去と比べて処理能力の向上は少なく、独占タイトルも少ない。互換性を重視しており、少なくとも当面は過去ライブラリを活用しつつ、縦マルチで凌いでいく方向のようだ。このままハードウェアとしては限りなくPCに近づいていくと思われる。

他方でGoogle、Amazonも取り組んでいるクラウドゲームは、数年先でも主要なプラットフォームには成り得ず、一部のカジュアルゲームや特定のマルチプレイ環境、特殊な大規模演算が必要なゲームに限られる可能性が高そうに思う。クラウドゲームを快適に遊べるレベルの安定した高速なネットワークを個々人の手元まで保証するのは並大抵の難易度ではないし、ネットワーク帯域は他の映像やエンタメもどんどん消費量を増やして食いつぶしていく。クラウドゲーム自体の解像度も上がる。レスポンスタイムの改善にも限界がある。

クラウドを含む他のプラットフォームは、標準化された開発・実行環境をベースとしてほぼ同じものとなり、結果として映像配信サービスのようにオリジナルタイトルによって差別化を進めるべく、スタジオの奪い合いが続くと思われる。とはいえ、AAAタイトルの開発費が高騰し、開発リスクが高まるにつれ、ファーストを含めてタイトルの独占は時限措置に過ぎなくなり、他社プラットフォームに対して後発でタイトル供給する動きも強まっていくかもしれない。

基本的には映像業界の後追いをしているように見えるため、中国市場とプラットフォーマーの台頭にも注意を払う必要がありそうだ。このあたりはこの先数年の西側世界との政治的な対立から大きな影響を受ける可能性が高く、現段階でどうなるかは正直よくわからない。

任天堂はその中でも特異な位置を占め続けると思われる。自社が提供するものを単なるビデオゲームとして捉えてはおらず、デジタル・アナログすべてを内包した遊びの体験と捉えて常に新たな体験を届けようとしているからだ。そのため、PCに準拠し標準化された入出力デバイスには満足せず、常に新しいインタラクションと体験を求めて失敗と成功を繰り返しながら独自のデバイスを組み込んだハードウェアを提供していくのだろう。

そしてビデオゲームとしても、カジュアルゲームを中心にマルチ展開の受け皿となりつつ、唯一無二の任天堂タイトルがプレイできるプラットフォームとして一定の存在感を保ち続けると思われる。

サブスクリプションの影響

MSはゲームパスを中心に、サブスクリプションへの移行を足早に進めていくと思われる。PSも互換性と過去ライブラリ、PSNのフリープレイをベースに事実上のサブスクリプションに近づいていく。XBoxはこれまでにも互換性を重視したプラットフォーム運営を積み重ねてきており、サブスクリプションへの移行に向けて準備は十分に整っているように見える。ただ、非欧米ユーザーにとってはタイトルやローカライズが不足しているのは大きな弱点だ。反面PSは互換性を含め中途半端な状況。

任天堂はここでも一線を画する立場を取っており、現状のNintendo Switchオンラインの運営状況から見ても、クラシックゲームを除く既存タイトルをサブスクリプションで提供するつもりはほとんどなさそうに見える。任天堂の収益が安定からほど遠く見えるのは、こうした安定収益に対する消極的な姿勢に拠るところが大きいのだが…。

Switchは、サードパーティータイトルの助けも借りることで当面の不安を払拭し、長寿ハードとしての条件をクリアしつつある。主要開発ラインの2周目リリースまでつなげば、7〜8年目まで売れ続ける道も見えてきた。次期Switchも、互換性を保ったハイブリッドコンソールをリリースすれば、最低でもボロ負けすることはないだろう。

任天堂株を買うタイミングが見えなくなってきた…。

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