TRIANGLE STRATEGYネタバレなしクリアレビュー:現代的に仕上げられた及第点のSRPG、だが往年の名作を期待してはいけない

TRIANGLE STRATEGYはどんなゲームか

ノゼリアという剣と魔法の世界を支配する3つの大国の間で、希少な資源である塩と鉄をめぐる政治闘争と戦争が巻き起こる。プレイヤーは大国の1つグリンブルクの領主セレノアとなり、大国間の政治と抗争に巻き込まれながら、自らと仲間の信念を秤にかけ、苦難の戦いに身を投じていく…決断によってルートが分岐し、戦闘は高低差のある3Dマップでユニット同士のアクティブタイムバトル形式で武器、魔法、スキルを駆使して戦う。いわゆるシミュレーションRPG。

制作はスクウェア・エニックスの第6ビジネスディビジョン、通称浅野チーム。このチームはブレイブリーシリーズやOCTOPATH TRAVELERなど、SFC時代のスクエニ名作タイトルを現代に蘇らせたようなタイトルを手掛けることで有名だ。

今作もビジュアルスタイルや戦闘システムは往年の名作Tactics Ogre(以下TO)やFinal Fantasy Tactics(以下FFT)を強く意識しており、ドット絵を3D上で表現したHD2Dと言われるスタイルで描写されたビジュアル、戦争と政治を扱いプレイヤーの選択によってルート分岐するシステム、高低差がある3Dマップで敵味方が入り乱れ、位置取りや順序を考慮しながら戦う戦闘システムなどはこれら作品の強い影響が見られる。

一般的な評価

ゲームメディアによるレビュースコアは82/100点、プレイヤー投票による評価は8.2/10点となっており、一般的には良作といった評価。ただしレビュー数は少なめで、この手のジャンルが好きな人が主な評価者となっていると思われる。

https://www.metacritic.com/game/switch/triangle-strategy


Amazon Japanの現段階での評価は3.5程度。早期クリア者の評価は厳しくなりがちだが、現段階ではギリギリ及第点といった評価。

何を期待したか

スクエニから出る戦記群像劇のSRPG、ルート分岐あり、戦闘システムはほぼTOとなるとやはり期待してしまうのはTOに匹敵、もしくは超える作品。私も当然のようにそれを期待していた。具体的には、奥深い世界観、魅力的なキャラクター、キャラや自軍の膨大なビルド・カスタマイズ、多彩な来歴を持つアイテム群、分岐によって交錯する多数のキャラクターの生死と生き様…といったところ。

どんな風に、どこまでプレイしたか

いわゆる真エンドを含む全エンディング、全想定バトルをクリア。1分岐を除く全分岐を網羅し、29キャラクターを揃え、全キャラLv50、最上位クラス到達、全武器全強化済み。

評価の概要

SRPGというより戦闘つきノベルゲームといった趣

ゲーム体験としてはドット絵芝居で進行する分岐ありのノベルゲー的シナリオパートが多くを占め、時折それなりに歯ごたえのあるSRPG戦闘が挟まる、という形式。イメージとしては、TOやFFTというより、うたわれるもの(ノベルゲー+SRPG戦闘)に近い。分岐ありの紙芝居でマルチエンドというのは確かにビジュアルノベルと親和性が高いが、あまりにストーリーに偏りすぎてビルド・編成・戦闘といったSRPG的要素はおまけのような印象を受けた。全体的には、近年のモバイルゲームに見られる現代的な簡略化を強く受けたゲーム

私は個人的にTO的なゲームプレイを期待していただけに、これにはかなり肩透かしをくらった。戦記的な部分も主要な登場人物が少ないせいか、限られた箱庭でちまちまと争い合っている印象が強い。主要なキャラクターも政治的な立ち位置をそのまま体現したものが多く、舞台装置的な匂いも残る。

描写の不足した希薄な世界

舞台となる世界も、ひたすらドット絵芝居と手記というテキストによって力押しのような形でのみ表現されており、マップやロケーション、アイテム等とそのフレーバーテキストによる補完が一切ないため、世界自体が非常に薄っぺらく、深みがないように感じられてしまう。


こんな感じの説明だけがたくさん用意されている

戦闘の自由度は高く面白いがビルド要素は皆無

戦闘は、メインシナリオを追うプレイなら大味ではあるが歯ごたえはあり、マップのギミックや各キャラクターのアクションが豊富なこともあってかなり楽しめた。純粋に戦闘の面白さを評価する人にはなかなか良い作品だと思う。ただ、ビルド要素がほとんど存在しないため、SRPGというよりは独自ルールの詰将棋のようなプレイ感覚があった。

固有キャラクター、固有ジョブ、固定スキルでカスタマイズ要素はほぼない

及第点だがやや物足りないストーリー

シナリオや演出はやや陳腐ではあるが、ルートによっては悪くはない。ただ、TOほどは分岐によって物語の流れが大きく変わることはなく、どのルートでも基本的な流れは共通で、途中の展開が分岐しては本筋に戻り、最後にエンディングが分岐するという形。信念の異なるキャラクターとの出会いと別れ、生き様の交錯のようなものを期待していたが、そうしたものが強く描かれるのはエンディング分岐のみであり、このあたりもやや物足りなく感じた。また、分岐をうまく消化できずに不自然な展開になっている部分も多い。


特筆すべき点がない音楽・ビジュアル、低い操作性

音楽とビジュアルはそれなりに良いが素晴らしく良いわけでもなく、及第点といったところだろうか。操作性にはいくつか難があり、シナリオ部でも戦闘部でもストレスが溜まりやすい。

と、おおまかな評価はこのようになる。ここからは、良かった点、不満だった点を個別に述べていく。

良かった点

豊富なマップギミックとユニットアクションによる戦闘の面白さ

このゲームの良さの大半はこの点にある。マップ自体はあまり広くはないが、メインシナリオで登場するマップには様々なギミックが仕込まれているものがいくつかあり、これらを動作させることで戦局に大きな影響があり、新鮮に楽しむことができた。
また、酒場で受注できるチャレンジクエスト的なものも、無限に湧く敵から規定ターン防衛する、特定エリアを専有する、逃げ回るボスを一定ターン以内に倒す等、戦闘・勝利条件に様々な趣向が凝らされており、こちらも飽きさせない工夫がある

呼び出したり移動したりできるトロッコで敵を轢いたり轢かれたり

また、魔法、スキル、アイテムによる地形や天候操作もあるため、マップ自体のギミックとあわせて戦闘の選択肢はかなり多くなる。各ユニットが持つスキルも単なる攻撃やバフデバフスキルに留まらず、色々と変わったものがある。敵をすり抜けたり、マップ内にトラバサミや強制移動させる罠を設置して動きを阻害したり、逆に任意の場所にハシゴを設置して高低差を無視したり。戦闘以外の部分で自由度は非常に低いが、戦闘内での自由度は高いと感じた。


敵をノックバックさせる罠の設置や任意の場所にハシゴをかけるスキル

賛否入り交じる点

初心者の間口を広げたシンプルなゲーム体験

松野氏が作ったTOとFFTの系譜は、深みのある世界、複雑な戦闘システム、自由度のあるビルド、膨大なアイテムとその探索、クリア後のストイックなやり込み要素と好きな人にはたまらない出来なのだが、マニア以外にはハードルが高すぎる嫌いがある。

今作は過度にTO/FFTにこだわりすぎることなく、思い切ってゲームの自由度を抑えてシナリオと戦闘にフォーカスすることで、マニア以外の人たちが手を出しやすいわかりやすいゲームに仕上がっている。消滅寸前だったこのジャンルに新規顧客を流入させる試みとしては悪くないのではないだろうか。

ただし、こうしたシンプルなゲーム体験は、奥深さや豊富なゲーム体験を求める層にはなんとも興ざめにもなり得る。好みによって大きく賛否が分かれるところだろう。

自軍内の政治を具現化した信念の天秤システム

メインシナリオではルート分岐しながら物語が進行していくが、このゲームでは主人公であるセレノアが選択肢を決めるのではなく、主要メンバーがコインを天秤に置いて投票し、秤の傾きで決定する民主主義的なシステムが採用されている。

このシステム、実際は全員をかなり簡単に説得できるため、自分の意に沿わないルートに進んでしまうということはほとんど発生しない。そういう意味でこのシステムはあまりうまく機能していないのだが、説得にあたって各選択肢を詳しく吟味し、各方針を支持するメンバーから多様な意見を聴くことで状況の理解が深まる、という良い効果は感じられた。

とはいえ、各メンバーが信念と異なるルートを強制された場合でもさして不満を持っている様子もなく、忠誠度が下がって不都合が起きるといったシステムも存在しない。主要キャラクターはあくまで開発者が決めたシナリオどおりにしか振る舞わない、というノベルゲー的ゲーム性がここでも際立っている。

舞台を彩る及第点の楽曲

印象的な曲はあまり多くないのだが、各場面を彩ってくれる音楽としては及第点のものに仕上がっている。ただ、ゲームプレイ上ワールドマップ、詰所、戦闘曲は非常に長時間聴くことになるため、やや飽き気味になるのは否めない。特にワールドマップのテーマはシナリオ進行で何度も何度も切り替わっては冒頭部分のみ聴かされるため、だんだんうんざりしてくる。これは音楽の問題というよりは、ゲームの進行の問題かもしれない。

ジオラマ的な良さのあるグラフィック

HD2Dによる個別マップ描写は、こじんまりとしたジオラマ的な良さはあった。HD2Dについても、3Dオブジェクトにドット風のテクスチャ、被写界深度等のエフェクトが組み合わさって単なるドットマップよりビジュアル面で優れてはいる。

しかし、OCTOPATH TRAVELERのように世界のあちこちを旅していくわけでもなく、戦闘マップは小さく独立して存在し、遠景がない(移動可能な部分の外側は引き伸ばした絵地図のようなものが表示されているのみ)ため、HD2Dの良さが十分に発揮されているとは言い難い

また、HD2Dは2Dのように見えてあくまで3Dオブジェクトなので、ロードの負荷がそこそこ高い。今作はメインシナリオの進行中に頻繁に場面が切り替わるため、その都度ロードが挟まってストレスの原因にもなっている。


ジオラマ的なHD2Dマップ…だが、ゲーム中この良さが見られる場面は少ない

戦闘における緊張感の不足

本作では戦闘不能にペナルティが一切なく、負けても経験値や戦功ポイント等が加算された上で使用アイテムは戦闘前に巻き戻した状態で再戦できるため、ひたすら殴り合っていればそのうち勝てる仕組みになっている。これは初心者に対する救済にもなっているのは間違いないが、ユニットロストの緊張感がなく、雑に戦ってしまう要因にもなっている。後述する狭いマップによって集団乱戦が起きがちなこともあり、戦闘不能を前提に雑に行動するプレイになりがちなのは残念なところ。

メインシナリオを戦闘不能なしでクリアすると特別なアイテムがもらえるため、やり込み要素として用意はされているが、味方キャラクターがある程度戦闘不能になる前提で設定されているマップがそこそこある(狭いマップで大量の敵に囲まれ、バックアタックと挟撃でユニットが蒸発しやすい)ため、戦闘不能を完全に避けようとするとTOやFFTなど比較にならないほど難易度が跳ね上がる

不満だった点

シナリオパートとゲームパートのバランスが悪い

特に序盤は、世界の紹介、登場人物紹介の比重がやたらと大きく、ひたすらAボタンを押すゲームプレイになっている。中盤以降はややマシになってくるが、端的に言って操作できない時間が長すぎる。これは、後述するゲームプレイの幅の狭さと表裏をなしており、自由にゲームプレイできる他のパートが少ないからこそ、シナリオパートが過大に感じてしまうのだろう。

ゲームならユーザーを操作不能にした上で一方的に情報を浴びせるのではなく、もう少しユーザーが操作する中で対話的に情報を得るように工夫して欲しかった。

ゲーム進行に無駄が多い

同じ章の中でのシナリオパートでも、場面が変わるごとにワールドマップに戻され、行き先(1つしかないことも多い)をプレイヤーに選ばせて、別の場面が始まる…といった進行になっている。しかし、どうせすべて見るのだからわざわざロードを増やし、操作を増やし、細切れにする意味がまったくわからない。周回プレイでもスキップしづらく、邪魔にしかなっていない。シナリオ重視にするにしても、章の構成は、前半シナリオ → 戦闘 → 後半シナリオとし、次の選択肢まで進む機能をつけてくれればそれでよかった。

このマップ切り替えとユーザー操作って必要でしたか?

RPGパートも、説得のための材料を集める場所がほしいのはわかるものの、それ以外はモブとの会話と光る場所を探してのアイテム収集とゲーム体験は貧弱で、進行の妨げになっている感があった。説得材料も説得シーンと一体のマップ中にすべて存在しているため、単なる作業にしかなっていない。説得材料をルートや時系列の様々なところに散りばめ、辿ったルート次第で使えたり使えなかったり…といったことがあればなおよかったのでは。

戦闘以外のゲームプレイの幅が狭すぎる

戦闘は地形、スキル、ギミック等で色んな行動が取れて面白いのだが、それ以外の部分でプレイヤーが出来ることが非常に少ない。ワールドマップを探索して、レベル上げやアイテム収集をすることも、隠されたロケーションを探すことも、武器防具を集めて誰に装備させるか悩むことも、自軍を編成することも、キャラのビルドを決めることも、サブクエストやサブイベントをこなすことも、まだ見ぬキャラが加入するイベントを探すことも、ダンジョンに挑戦することもできない。

決められたシナリオをただノベルゲーのように順になぞって戦闘していくだけで、RPGパートという名の探索も非常に狭い範囲の限定的なもので、中途半端と言わざるを得ない。これは絵本ではなくゲームなのだから、もう少しプレイヤーに色々な選択肢を与えて、プレイヤー自身が選び、遊ぶ余地を与えて欲しかった

描写が偏り希薄で奥行きの不足した世界

このゲームは、とにかくテキストやムービーですべての情報を語る傾向にあり、それ以外の要素で世界を描写することがほとんどない。具体的には、ドット絵芝居の台詞か、手記・情報がほぼこの世界を表すすべてになる。

繰り返しになるが、これはゲームなのだから、会話と情報テキスト以外にもゲームプレイで世界や物語を語ることは出来るはずだ。例えば、移動可能なワールドマップ、マップに散在する様々な都市や地形、それらを結ぶ街道、生産されている武器や防具、世界の歴史にまつわるアイテム、過去や現在使われている魔法とその体系、各民族の特徴とジョブやステータス、生息する動物やモンスター、外部の世界の存在とその関係…このゲームにはそういったものが驚くほどに欠落している

結果として、このゲームの舞台となる世界は非常に浅薄なものとなり、魅力が感じられないものになってしまっている。

ビルド・カスタム要素が非常に少ない

RPGの育成には色々なタイプがあるが、このゲームは懐古向けにわかりやすく言うとFF5ではなくFF4タイプだ。自軍にはイベントで仲間になるキャラクターしか存在せず、彼らのクラス(ジョブ)はすべて固定されており、変更することはできない。上位クラスに転職することはできるが、固定で2回専用の上位クラスに変更できるだけだ。各クラスが習得できるスキルもすべて固定で、レベルが上がれば勝手に覚えていく。

TOやFFTであったような、モブを雇ったり敵を説得したりして仲間に引き入れ、好きなビルドで戦力として育てていく…といったことは一切できない

また、驚くべきことにこのゲームには武器アイテムや防具アイテムが一切存在しない。アクセサリはあるが種類は非常に少なく、筋力のリング、筋力のアームレット、筋力のブレスレット…というように各ステータスに対応したものがほとんどで、いくつか例外があるだけだ。

アクセサリはだいたいこんな感じ

武器は最初から全員が固有のものを装備しており、変更することはできない。素材を使って鍛冶で鍛えることによりステータスや武器スキルを追加していくことができるが、決められたパネルを素材で順に開放していくだけなので、実際はスキルとなんら変わらない。また、防具という概念は存在しない


主人公セレノアの武器。パネルを開放していくだけ

見え隠れするシナリオの粗雑さ

基本的なメインシナリオはどんな選択肢を取っても同一(エンディング分岐のみ異なる)で、信念の天秤による分岐も大きなメインルートに挟まる小さな寄り道でしかないにも関わらず、ルート分岐は一時的に真逆の選択肢が用意されているため、メインルートへの復帰時に不自然で強引な展開になっている部分が多い。

また、こうした進行の都合上か、強い信念を持っていたはずのキャラクターですら貧弱な説得材料で簡単に信念を翻している場面もよく見受けられた。こうした不自然な言動が、キャラクターの魅力を損なっている点も見過ごせない。

戦闘マップが狭く密集乱戦になりやすい

マップのギミックは凝っていて面白いのだが、基本的に狭いマップが多く、またシナリオの都合上狭い場所で敵に囲まれて始まる戦闘がそこそこある。また、何度も敵が湧いて押し寄せるマップも多く、とにかく敵が密集して乱戦になりやすい。ここに弓兵のバックアタック、盾兵の吹き飛ばし、剣士の範囲攻撃、遠隔からの範囲魔法、挟撃による大ダメージが重なるため、密集乱戦だと動きを計算しきるのがほとんど不可能で、事故って誰かが戦闘不能になりやすい

もっと酷いものがたくさんあるが…こんな感じの囲まれるマップが非常に多い

さらに、このゲームは味方の戦闘不能にペナルティがないため、味方がある程度戦闘不能になることを前提に、魔術師にひたすらTP補給して密集地帯に範囲魔法を撃ちまくるみたいな雑な戦闘がしたくなってくる。あまり戦術的に戦っている感じがしないので、こういうマップはあまり何度も出さないでほしい。

キャラクターの魅力が薄い

メインシナリオに絡む主要キャラクターは、キャラクターとしての魅力がないわけではないのだが、それぞれの状況に対して独自の思考を持って行動しているというより、ルート分岐するシナリオを進行させるために行動させられている、という印象が強く、全体的に魅力が薄い。せめてサブクエストのような形で固有のシナリオがあればよかったのだがこのゲームには残念ながらサブクエストというものが存在しない。突然発生する「挿話」という非常に貧相な会話イベントがあるだけだ。

また、主要キャラクター以外の志願兵のようなキャラクターも多数登場するのだが、彼らはメインシナリオの途中で突然、本当に突然なんの前触れもなく自軍に加入し、メインシナリオには一切絡まないため思い入れが湧きづらい。彼らについてもサブクエストはなく、挿話がいくつかあるのみだ。

ワールドマップがあり、特定のロケーションに行くとサブクエストが発生して救出イベントで仲間になるとか、特定のアイテムを揃えると仲間になるとか、そういうものが欲しかった。

メニューや戦闘時の操作性が悪い

本作では最終的に30体ほどのユニットを管理することになるのだが、一覧性が非常に悪い。全ユニット表示画面で出せる情報は基本ステータス程度で、個別の画面ではLRで30体を切り替える必要があり、ステータス画面では攻撃力や防御力のような基本的な情報も表示されていない。

さらに厳しいのはクラスアップ、武器強化、アイテム購入画面で、クラスアップ素材購入画面では誰に必要かわからないし、クラスアップ画面の方では30人を1人ずつ切り替えないとわからない。鍛冶も同様で、何度も鍛冶場と素材屋をいったりきたりすることになる。

戦闘時の視認性や操作性もかなりよろしくない。HD2Dの3Dマップ上に半透明で移動範囲や向いている方向等が表示されているのだが、まずこれが非常に見づらく、敵の向きを勘違いしてバックアタックが失敗することがまま発生する。さらに、3Dマップではカメラを左右だけでなく上下にも回転できるのだが、ドット絵は4方向に対応した4種類しか用意されていないため、カメラ角度によってはユニットが向いている方向がよくわからなくなってしまう。カメラ角度によって十字キー等によるマス目移動方向も変わるが、どの角度からどう切り替わるかが非常にわかりづらく、カーソルが明後日の方向に動いていく事態が頻発する。

これはまだ敵が少ないだけマシな方

また、ユニットの行動を試行錯誤する際にも、間違ってターン終了してしまい、致命的なミスになることがままある。本ゲームでは様々な場所への移動やコマンドを確定前に試して試行錯誤することが多いのだが、この際行動や移動を選択していない状態でBボタンを押すと方向決定待機状態になってしまい、この状態でAボタンを押すとユニットが何もせずにターンを終了してしまう。半透明のエフェクトが非常に見づらいこともあり、ユニットが今どの状態なのかビジュアル上非常にわかりづらいため、何度も試行錯誤していると間違えて何もせずにターンを終えてしまい、ユニットが戦闘不能になったりしてストレスが溜まる。


結論:6.8/10

Pros

  • 衰退するジャンルの中で現代的に仕上がった間口の広いゲームデザイン
  • 豊富なマップギミック、地形効果とユニットスキルによる歯ごたえのある戦闘

Cons

  • ストーリーテリングがノベルゲームのように一方的で、かつ分岐をうまく扱えていないため不自然な展開が多発している
  • ゲーム進行や3Dマップの操作等、操作性とユーザー体験にやや難がある
  • 世界の描写がテキストに偏りすぎ、かつ不足しているため深みと魅力に欠ける
  • 育成、ビルド、アイテム収集、探索等の要素がほぼなく、戦闘以外のゲームプレイの幅が非常に狭い

今作は間口を広げた入門編としてカジュアルに制作されていると想像するが、セールスが一定以上の水準となるのであれば、今後はもう少しゲームプレイに幅を持たせる方向での続編制作を期待したい。ノゼリア以外の地域の存在も示唆されていることから、様々な発展の方向性が考えられると思う。
とはいえ、本作の方向性とOCTOPATH TRAVELERで行われた後続作品の展開を考えると、本作の続編もガチャありのモバイルゲームとして展開される可能性が低くないと思われる…個人的にはそうしたオチだけは避けて欲しいものだ。

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