Nintendo Switch、PlayStation4が5年かけて積み上げた国内販売台数をわずか2年で逆転


今週、2017年3月に発売されたNintendo Switchが、2014年2月に発売されたPlayStation4の国内累計販売台数を上回った。PlayStation4は約3年のアドバンテージを生かすことができず、わずか2年で逆転を許したことになる。期間あたりの販売台数を平均すると、SwitchはPS4の2.5倍にも達する。

国内外で好調なSwitch

Switchはローンチでのスタートダッシュに成功し、初年度の生産能力不足、二年目のタイトル不足に悩まされながらも、国内外でWiiを上回る好調な販売ペースを維持し続けている。これは次のような要因によるものと思われる。

ハードウェアそのものが持つ高い魅力

Switchはその名の通り、TVに接続して据置型のようにして遊ぶTVモード、取り外して携帯機のように使う携帯モード、モバイルTVモードとも言えるテーブルモードを切り替えて使うことができる。これにより、TVやモニタを専有して腰を据えなくても、ソファに寝転んだり、自室に持ち込んでベッドで寝転んだりしながらプレイすることもできる。

一つよく誤解されているのは、Switchの携帯モードは外に持ち出して遊ぶために使う、と思われていることだ。確かにそうした使い方もできなくはないが、Switchはちょっとした外出で持ち歩くのにはまったく向いていない。まずサイズが大きすぎ、気軽に取り出すこともプレイすることも難しい。3DSのように折りたたんで液晶を保護する仕組みもないため、気軽にカバンに放り込むのにも不安がある。

では携帯モードは不要なのでは、と思うかもしれない。しかし、携帯モードは子供や家族持ちには非常に大きなメリットをもたらしてくれる。最近ではスマホの普及によってリビングにしかテレビがない家が多いと思う。こうした状況で、ゲームを遊ぶためにリビングのテレビを長時間専有するのは、子供にとっても大人にとってもかなり難しい

実際私の家でも、テレビは家族が長期間専有しており、ゲームにはほとんど使うことができない。また、ゲームに使ったとしても、没入感の高いゲームでいちいち干渉されたり、クセの強いゲームを家族に見られるのは嫌なこともある(それが楽しいこともある)。Switchはこうした用途をスマートに解決し、スマホゲームに比べても十分にゲーム性の高いゲームを自由にプレイできる環境を与えてくれるのだ。

これは、自由に部屋を専有できる一人暮らしの若者にとってあまり意味がないかもしれない。実際、Switchの世代内訳では20代が少なく、PS4の内訳では20代が強い。しかし、子供世代、結婚して家族を持った30代以降世代ではSwitchが支持されている。20代もライフステージが変化するにつれ、ハイブリッド機の魅力に気づく可能性は高い。独立した10代の離脱を気にかける必要はあるが。

WiiUに割くはずだった開発リソースの前借り

Switchの前世代機であるWiiUは、国内外での販売不振ぶりから早期の撤退を余儀なくされた。この結果任天堂は、Switch発売前の数年間を3DSでなんとかしのぎながら、次世代に向けたゲーム開発期間を得られることになった。この期間、本来WiiUに出るはずだったであろうタイトル群をSwitch向けに方針転換することで、ロンチ年の発売タイトルを充実させたであろうことは想像に難くない。もともとWiiU向けであったゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド、スーパーマリオオデッセイ、ゼノブレイド2などはおそらくこうした経緯を辿ったと思われる。

また、WiiUがあまりに売れなかったため、WiiU向けに発売したタイトル群は多くの人目に触れることなく埋もれてしまった。任天堂はこの状況を逆手にとり、WiiU向けに発売されためぼしい自社タイトルをことごとくSwitch向けタイトルとして再発売し、ロンチ近辺としては異例なほど自社タイトルを充実させることに成功した。マリオカート8DX、進め!キノピオ隊長、ドンキーコングトロピカルフリーズ、New スーパーマリオ ブラザーズU DXなどはこれに当たるし、リメイクと銘打ってはいないもののSplatoon2もかなりこれに近いだろう。

据置機と携帯機の融合による3DS開発タイトルの合流

ゲームキューブ以降の任天堂据置機は常にサードパーティータイトルの不足に悩まされ、タイトル不足から早期に失速していく流れを繰り返していた。反面、携帯機では数多くのサードパーティータイトルを揃え、長寿命を誇ってきた。

Switchは据置機と携帯機を統合することで、据置向けと携帯機向けのタイトルを1つのハードウェアで発売することになり、タイトル不足が解消に向かった。特に、ポケモン本編がSwitchに合流する効果はすさまじく、多くの中小サードパーティがSwitchを3DSの後継とみなした結果、様々な中小タイトルがSwitchに集結しはじめることとなった。

また、自社タイトルだけでもかなりハイペースでゲームをリリースできるようになっており、ロンチから現在に至るまでおおよそ2〜3ヶ月に1タイトルのペースでのリリースを続けている。

ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドの歴史的大成功

Switch成功の立役者とも言えるのが、ロンチタイトルであり、長年ぱっとしなかったゼルダの伝説シリーズの歴史的復活劇である。ゼルダの伝説シリーズは、SFCで発売された神々のトライフォース、64で発売された時のオカリナという数多のフォロワーを生み出した歴史的名作を持つが、これらの発売は既に20年近く昔の話となり、ここ最近のセールスは右肩下がりで前作スカイウォードソードの国内セールスは30万程度と、もはや看板タイトルとは言い難いほど低迷していた。

大成功した最新作と対比して振り返ってみると、低迷の大きな要因は、一本道化した自由度のない展開、巨大で長時間閉じ込められるダンジョン、1箇所でも詰まるとゲーム進行が不可能になる面倒な謎解きにあったと考えるのが妥当だろう。ブレスオブザワイルドはこれらすべてを刷新し、広大な世界を思うままに、思う順序で、思う方法で冒険することを可能にし、かつこれらの完成度を未踏の領域にまで高めることで、歴史的な成功を収めるに至った

実際、世界中のゲームレビューをまとめたMetacriticでは過去最高の97点を叩き出し、現在に至るまで歴代最高ゲームの名を欲しいままにしている。任天堂のゲームといえば子供やライトゲーマー向けという印象が強く、どうしてもコアゲーマーには訴求しづらいところがあったが、海外のコアゲーム群をすべて抜き去った世界最高のオープンワールドゲームがSwitchに登場してしまっては、コアゲーマーもプレイせざるを得ない。また、ブレスオブザワイルドはコアなゲームプレイだけでなく、素材を探しながらふらふら大地をさまようライトなプレイでも楽しむことができ、ライトゲーマーも広く虜にする魔術的な魅力を備えている。

セールス面でも躍進は著しく、発売当初こそ平凡な売上にとどまっていたものの、口コミで評価が広まるとともにじわじわと販売数を伸ばし、発売から現在まで一度もセールストップ20から脱落することなく売れ続け、PS4版ドラクエ11すら抜き去って2年で140万を超えてまだまだ減速の気配を見せていない。世界累計では1,400万本を突破し、さらに加速を見せているというまさに化物級のタイトルとなった。

自社タイトル群の充実とサードパーティーの衰退

ゼルダの歴史的成功に続き、マリオカート8DX、マリオオデッセイが凄まじいセールスを見せ、国内ではSplatoon2も強力な牽引役となった。やや落ち着いた時期はあったものの、星のカービィ スターアライズ、ドンキーコング トロピカルフリーズ、進め!!キノピオ隊長等の中堅タイトルでつなぎながら、ポケモンピカブイとスマブラSPで巨大なセールスを確保、ほぼ自社タイトルだけでSwitchのセールスを2年間牽引しきったといっても過言ではないだろう。

コンソールゲーム業界ではこれまで、サードパーティタイトルをいかに呼び込めるかで勝負が決まると言われてきた。事実、PS1はスクウェアの参入によってSSや64への決定的勝利を得たし、PS2もFF・DQシリーズによって盤石の立場を築いた。WiiやWiiUがサードパーティータイトル不足で沈没したのも明らかだろう。任天堂はどうにかしてサードパーティーを誘致しようとしてきたが、サードは外伝や後発移植を散発的にリリースしてセールスに満足せず撤退を繰り返し、本格的な参入はごく一部にとどまってきた。このため、任天堂が自社で得意とするアクションゲームやパーティーゲーム以外のタイトルが慢性的に不足することになっていた。

そんな中、近年の任天堂は開発ラインを増やし、子会社や外注のパブリッシングを含む自社タイトル群で不足ジャンルを補うべく努力を続けてきた。スラッシュアクションのベヨネッタ、JRPGのゼノブレイド、現代にあわせて刷新したシミュレーションのファイアーエムブレム、人を殺さないシューターのSplatoon、シンプルな操作で戦える格闘ゲームのARMS/スマブラ、そしてオープンワールドのゼルダなどがそうだ。

こうしたタイトル群はいつの間にか存在感を増しており、主要なゲームジャンルのうち任天堂が提供できないのはもはやモンスターハンターが位置する狩りゲーくらいになってきている。反面、国内ではPSプラットフォームの停滞とともにサードパーティーの影響力が低下してきており、マルチプラットフォームでリリースしてなんとか開発費を回収したり、任天堂パブリッシングタイトルのデベロッパーにまわることも増えてきている。

サードパーティーの主要なタイトルは近年PS系プラットフォームで独占的に提供されてきたことから、任天堂ユーザーのサードタイトルに対する認知度は大きく低下してしまった。典型例は全盛期の3分の1以下にまで売上が落ち込んでしまったFFだろう。その他のサードパーティーにとっても、このタイミングでプラットフォームのシェアが逆転してしまったことは大きな試練となることが予想される。

インディータイトル群によるゲーム不足の克服

自社タイトルでSwitchの販売を牽引してきたとはいえ、さすがに2ヶ月に1本程度のリリースではタイトル数が圧倒的に不足してしまう。そこで今回タイトル不足を補ってきたのは、主にeShopでダウンロード販売されているインディータイトル群だ。

300〜3,000円程度で気軽に遊べる中小タイトルが中心でグラフィックもレトロだが、独特のゲームシステムや変わったアイディアが盛り込まれたものが多い。こうした特徴は、グラフィックに対するこだわりが薄く、アイディアとゲーム性を好む任天堂プラットフォームと相性が良かった。また、高い評判を得たタイトルが優先的に移植されたことから、半端な国内サードパーティータイトルよりクオリティが高いこともすぐに明らかになった。任天堂の自社タイトルは、ゼルダやSplatoon2、スマブラのようにプレイ時間が長くなるものが多く、合間に気分転換できる小粒のインディータイトルは抜群の組み合わせだったと言える。

Switchローンチ当初にいち早く発売されたタイトルは、他のプラットフォームに比べて非常に大きな収益が得られたという開発者の発言が相次いだことも話題となり、数多くのタイトルが殺到することになった。これにより、発売タイトル数はあっという間に激増し、1年半で850本を超えるまでになった。これは動きの遅い従来のサードパーティーとは対照的で、これによってますますサードパーティの居場所が削られてしまったことになる。

他ハードと互換性が高く、移植しやすいアーキテクチャ

Wii、WiiU、3DSはどれも画面構成やコントローラが独特で、開発環境も独自色が強く、他のプラットフォームからの移植はかなり難しかったらしい。しかしながら、Switchはシンプルな1画面構成と通常のコントローラを備えており、特殊な使い方はあくまでオプション的位置づけになったことから、ゲームの移植はかなり容易になった。

汎用ゲームエンジンであるUnityやUnreal Engine4に対応したことも大きく、高い処理能力が不要なゲームであれば少し手直ししてリビルドするだけで移植できるようになった。これにより、早期からモバイルゲームや後発移植が進み、最近では中規模までの新規タイトルの多くはSwitchを含むマルチプラットフォームでリリースされるようになってきた。

こうなると、国内では自社タイトルが圧倒的に強力な任天堂プラットフォームの優位が際立ってくる。サードタイトルが主力のプラットフォームでは、主力の多くがSwitchでも遊べるようになってしまうと優位性が失われるが、Switchの主力タイトルである任天堂ゲームが他のプラットフォームで出ることは絶対にないからだ。

ビジュアル面で他機種との差がほぼなくなった

Switchは携帯機の側面も持ち、消費電力や排熱を抑える必要から他機種に比べると処理性能はかなり低くなっている(およそ4分の1程度と言われる)。しかし、解像度に限って言えばTVモードでフルHD、携帯モードでHDと主流現行機と比べて解像度面での差はほとんどなくなった。

といっても処理能力には歴然たる差があるため、オブジェクトや視覚効果が減っていたり、フレームレートが低かったりといった視覚面での差は当然存在する。しかし、3DSやWiiの頃と違ってぱっと見の差はほとんどなくなったことが大きい。コアゲーマーでもなければ、ちょっとした背景オブジェクトの有無、視覚効果の差、フレームレートの差などは、ほとんど見分けがつかないのだ。

ハイエンドコンソール機は次第に4K解像度をターゲットにし始めているが、FHDと4Kの違いを気にするユーザーの比率はあまり高くない。テレビやモニタの4K普及率の低さも拍車をかけている。要するに、一般ゲーマーからするとSwitch程度で十分なのであり、PS4やXBox Oneは過剰の粋に到達しつつあるのだ。これはGameCubeの大失敗後、Wii/DSの時代から任天堂が予期し準備してきた状況だが、一時的である可能性も高いとはいえ、現在その状況は具現化しつつある。

海外産のフォトリアルなAAA作品がまともに動作しないことは大きな問題だが、日本ではこうしたゲームの人気が低いことに助けられている面は大きいだろう。

国内は不振、海外で絶好調のPS4

海外絶好調の要因

PS4はといえば、累積販売台数1億台を控え、海外では絶好調である。これは、同世代の他社コンソールがことごとく自滅したことが大きな要因だろう。Wiiとの違いを訴求できず、特殊な二画面構成と貧弱な開発環境で自滅したWiiU。Wiiの幻覚に魅せられKinect同梱による高価格と厳格なDRM適用によるユーザー軽視の姿勢からロンチに失敗したXBox One。

こんな中PS4は、変態アーキテクチャと揶揄されてあらゆるゲーム開発の足を引っ張ったPS3路線を捨て、ほぼPCと同様のアーキテクチャへと舵を切り直した。海外大型タイトルは開発費が高騰を続けた結果、単一プラットフォームで大きな利益を上げることが難しくなり、徐々にPCをベースとしてマルチプラットフォームへリリースする体制へ変化してきた。この際、アーキテクチャがPCに近く、スペックも高いPS4にはAAAと呼ばれる大作ゲームが相次いでリリースされるようになり、タイトル充実に大きく貢献することになった。

国内不振の理由

Switch好調の要因と表裏を成すものが多いが、中でも海外大型(AAA)タイトル群が日本ではほとんど受け入れられていないことが大きな理由だろう。AAAタイトルには実写のような見た目で人やゾンビを撃ち殺すものが非常に多く、トゥーンベースで明るい世界を好む日本の一般ユーザーに対してまったく訴求できていない。

任天堂のように自社タイトルで牽引できれば良いのだが、SIE(Sony Interactive Entertainment)はPS3やVitaの失敗からもはや日本市場を特別視しておらず、日本市場で受けの良いタイトルを開発しようとはしなくなってしまった。

とはいえ、国内サードパーティー各社はWiiUの失敗を見てPS4へ注力する姿勢を明らかにし、2016年後半にFF15、2017年にはドラクエ11、2018年にはMHWと国内主力タイトルが勢揃いすることになった。しかし、ロケットスタートするはずのFF15は酷評を受けて失墜し、ドラクエ11が発売する頃にはSwitchがSplatoon2とともに破竹の勢いを見せ始め、MHWでもその勢いを止めることはできなかった。

国内主力サードタイトルがすべて揃ってなおSwitchに完敗したPS4

サードパーティータイトルがすべてを決めると言われるコンソールゲーム市場で、FF、ドラクエ、モンハンのナンバリング(相当)タイトルが全て揃ったのは実はPS2以来の出来事だ。当時のモンハンはヒット作ではなかったため、事実上史上初と言って良いかもしれない。PS4はこれ以外にも、ストリートファイター、みんゴル、エースコンバット、テイルズ、鉄拳、グランツーリスモ、ソウル、キングダムハーツ、DMC、バイオ、ペルソナ、龍が如く、ドラゴンボール、ナルト、ワンピース、ガンダム、ウイイレとありとあらゆる有名タイトルの最新作を揃えることに成功した。これら最新タイトル群のほとんどは、Switchでは未だに発売されていないし、その予定もないのだ。

にもかかわらず…これほどの圧倒的勝利条件を満たしつつも、PS4はSwitchに敗北してしまった。完敗したといっていいだろう。サードの大半を押さえたにもかかわらず、5年かけて達成した販売台数をわずか2年で逆転され、現状の売上ペースはもはやSwitchの3分の1以下なのだ。これを完敗と言わずしてなんと表現すればいいのか。

この逆転劇は何を意味するのか

この衝撃的な逆転劇はどう捉えればいいのだろうか。PS4陣営はほぼベストな働きをした。では、Switchの成功要因を積み上げただけでこれほどの逆転劇は起き得るものなのか?

答えの一つは、おそらく国内で据置型の市場はとうの昔に崩壊しており、コンソールゲーム市場の大半は携帯機に移っていた、というものだろう。実際、つい最近生産終了し、壊滅的な失敗作とみなされているPS Vitaですら700万台近く販売しており、PS4がようやくこれを上回ったのは比較的最近のことだ。3DSに至っては国内累計だけで2,400万台を超えており、これは2年で800万台のSwitchでも到達できるか相当怪しい数字である。

Wii/DS/PS3世代にさかのぼってみても、DSは国内で3,400万台と圧倒的な売上台数を誇り、Wiiの1,000万台とは比較にならない。国内コンソール市場はずっと携帯機が主流であり、そこでの王者は変わらず任天堂が握ってきたのだ。Switchはハイブリッド機としてその座を譲り受けたに過ぎないのだろう。

純粋な据置市場に限って見ると、国内では今後も縮小傾向が続く可能性が高い。Switchに限っていえば携帯機市場と一体化した形で存在感を見せるだろうが。

今後の展開

GoogleがStadiaでクラウドゲーム市場に参入を表明し、MSもXCloudで競合する構え、Appleはサブスクリプションサービスを打ち出し、PSは次世代機をほのめかす、とまさに動乱前夜、群雄割拠の時代を予期させる動きが続いている。

国内の展開

しかし、国内では大きな変化は見られず、モバイルゲームが横這い、Switchが3DSと入れ替わる形で市場を維持し、PSは徐々に沈下、その他は存在感を発揮できない流れが続くのではないだろうか。日本でモバイルと携帯機の人気は非常に強固であるし、クラウドゲームは遅延や輻輳の問題を解決しきれるとも思えないため、どちらかというとモバイルゲームと食い合いつつ小さな市場を形成すると思われる。

PS陣営はもはや携帯機市場に参入することはないだろうし、任天堂もSwitchと食い合う形での携帯機を出すことはないだろう。据置・携帯の2ハード体制が1ハードになった分の穴は、おそらくモバイルゲームで埋めるつもりだろう。

海外の展開

海外に目を移すと、今後はますますPC・モバイルが主流となっていく気配を感じさせる。特に中国を始めとする新興市場がPC・モバイル中心であることが大きいだろう。MSは現世代であまり成功しているとは言えないが、クラウドゲームが失敗したとしてもWindowsと連動したXBoxプラットフォームで同程度の存在感は維持するだろう。

Switchは時が経つにつれてますますPCとのマルチが難しくなっていくため、PCゲーム市場とは一線を画し、モバイルゲームと半ば融合した独自のプラットフォームとなる可能性が高い。良いペースで普及を続けてはいるものの、この立ち位置でどこまで売れるかは未知数だ。とはいえ、海外主要国での普及ペースは実はPS4を上回っている。フォトリアル至上主義で携帯機不毛の地と言われる海外にも日本と似たニーズは存在するのだろう。個人的にはPS4と同程度、Wiiを少し上回る程度に落ち着くのではないかと考えている。

PSはかなり微妙な立ち位置で、PS5との世代交代がうまくいかなければPCやMSに押されて一気に市場を失う恐れがある。おそらくPS4との互換性とPSNによる半サブスクリプション化を武器にしてくるとは思うが、性能差が低ければPS4 Proとの違いが出せず、PCとの性能差が開きすぎれば生命線であるAAAタイトルのマルチリリースが危うくなってくる。ハイエンドに寄りすぎれば価格が高騰し、PCとの違いも希薄になってくる。近年自社タイトルが成功しつつあるのは朗報だが、いずれも単発でIPとしての価値を確立したとまでは言い難い。サードパーティ各社のAAAタイトル群が相次いで失敗し、ビジネスモデルに破綻の兆しが見えるのも懸念材料だ。

最も無難な選択をすることで漁夫の利を得て成功したPS4だけに、PS5でも順当な性能アップだけで済ませてくる可能性は非常に高い(それにしても、微妙な判断を迫られるのだが)。群雄割拠の時代でも日和見漁夫の利作戦は通用するのか、注目したい。

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