ゼノブレイド2は、Nintendo Switch専用タイトルとして2017年12月にモノリスソフトから発売されたRPGだ。前作ゼノブレイドはWii向けに発売され、広大なシームレスフィールド、生態系を感じさせる多様なモンスター、エンカウントからシームレスに移行しリアルタイムで展開されるバトル、ドラマティックな演出、高品質な音楽、プレイヤーを引き込むストーリー、魅力的なキャラクター、SFと古代思想が融合した独特の世界設定、世界やキャラクターの設定と融合した独自の戦闘システム等により高い評価を得ている。
初代ゼノブレイドは世界中のレビューを集めたMetacriticのレビュースコア(メタスコア)で92点という高得点を叩き出しており、Wiiのタイトルでは唯一のプラチナ評価と、客観的に見ても非常に高評価を得た作品と言ってよいだろう。
とはいえ、地形デザインやオープンワールドとしてのシステムの完成度は現在でも匹敵するものは数少ないと言われるほど素晴らしく、人間形態で1つの惑星全体をシームレスに移動できるだけでなく、ドールと呼ばれるロボットに搭乗することにより、陸上のみならず空中を高速飛行することまで可能だった。また、独特の地形デザインはもはやモノリスの代名詞と言えるレベルまで高められており、他社タイトルでその特徴的な地形が模倣されることもしばしばだった。
海外ではシステム面が評価されてそれなりに好評、日本ではストーリーを評価して不評となり、メタスコアは84点という結果となった。ただ、セールス面ではWiiU自体の普及が思わしくなかったこともあり、成功を収めたとは言い難い。ゲームショップでは1,000円前後で叩き売られることとなり、少なくとも日本では若干黒歴史のような位置づけになってしまった。
ゼノブレイド2をゼノブレイド XXXX ではなくナンバリングとしたのは、一度シリーズを仕切り直してストーリー、キャラクター、演出を重視し、ゼノブレイドをIPとして立て直す意図もあったのではないかと思う。
×:削除・消滅、△:劣化・縮小、○:維持、◎:改善・強化
どうだろうか。ロボ関連の21~24は作品の方向性が違うから置いておくとしても、20個あった魅力・長所のうち、改善されたのは1つ、概ね維持されたのは5つ、劣化したものは5つ、消滅したものは9つである。以下、詳しくみていこう。
ゼノブレイドシリーズでは、桁外れの強さを持つ敵の目をかいくぐりながら、広大なフィールドを探索していくワクワク感が大きな魅力の1つになっていた。ステルスと逃亡を繰り返せば、シームレスエリア内ならどこにだっていけるし、思いもかけない敵や宝に出会うこともあった。しかし、フィールドスキルはその全てとは言わないまでも、ほとんどを破壊してしまった。好奇心に導かれて探索しても、あちこちで通行止めを食らってしまうし、せっかく見つけた宝箱も開かない。フィールドスキルの種類は10種類以上もあり、要求レベルも最大8程度とかなり面倒くさく、いつ頃に到達できるかもはっきりわからない。こうした障害物がエリアごとに十数個は存在しており、アイテムや地形を収集するためには進めなかった場所を覚えておき(マップには記録される)、再度訪れてまわる必要がある。それはもはや、探索ではなく作業である。
また、フィールドスキルを発動するためには単にスキルを持ったブレイドを保有しているだけではダメで、場合によっては100体を超えるブレイドの中から必要スキルを持つブレイドを探し出し、装備し直す必要がある。同時に2~3種類のフィールドスキルを求められることも珍しくなく、6~9の装備枠に対して2~3種のスキルがそれぞれ2~8レベルを超えるように探して装備することになる。この際には戦闘用に装備したブレイドをいったん外さなくてはならないが、フィールドスキル用のブレイドはたいてい雑魚なので、障害突破後にはまた戦闘用に戻すことになる。その先で再びフィールドスキルが必要になると、また同じことを繰り返すのだ。
しかも、障害物がフィールドスキルの発動で消え失せるタイプならまだ良いが、ジャンプしたり潜ったりするタイプだとそこを通るために何度もスキルを発動させなくてはいけない。ダンジョンで迷っている時などは同じ場所で何度も付け替えることもある。これではとても探索を楽しむどころではない。おそらく、今作の目玉であるガチャで集めるブレイドシステムのありがたみを増すために強化・導入したのだろうが、完全に失敗だと思う。せめて手持ちのブレイドと装備可能枠からシステムに自動判定させるべきだった。
しかしながら本作では、地図に対応するエリアに一歩侵入した瞬間、地図の地形が全開放される。ロケーションやランドマークはさすがに表示されないが、これだけで探索の意欲は十分に減ってしまう。また、地図システム自体の出来も非常に悪かった(アップデートで多少改善された)のも問題だった。何しろ発売当初は自分がどこにいるのかほとんどわからず、探索を断念してフィールド上の3Dマーカーを追うことに専念するプレイヤーが続出したほどだ。これは、発売当初のAmazonレビューを見ればよくわかるだろう。
さらに、変更されてはじめて気づいたことだが、踏破していない場所まで勝手に地図が開放されてしまった場合、まだ行っていない場所がどこなのかがまったくわからないのだ。これは、クエストや素材集めの進行で困った際に特に問題となる。広大なフィールドを行ったことのある場所も含めて虱潰しにする経験は、控えめに言っても不快なものであった。
対する2では、まず冒険の動機がいまいちはっきりしない。冒頭であっさり殺されヒロインに命を救われた主人公は、ヒロインが望む世界樹の頂上「楽園」を目指して様々な国を渡り歩きながら、出会い、敵対、戦闘、和解、別れを繰り返していくというのが大きな流れだが、ヒロインが楽園を目指す理由は物語終盤まで明かされることはない。主人公は、緩慢に滅びを迎えつつある世界が楽園に行けば救われるのではないか、という特に根拠もない淡い考えは持っているものの、基本的にはヒロインに頼まれたから目指している。
まぁ、これはまだいい。動機がなんであれ、旅の過程で絆を築き、試練を超え、成長してくれれば。しかし、ゼノブレイド2ではそこもいまひとつだ。例えばタイトルにもなっているゼノブレイド…これは初代では神剣モナドを指し、2では天の聖杯と呼ばれる最強のブレイド、ホムラ・ヒカリを指す。初代では、モナドの力を使いこなすために少しずつ試練を乗り越え、一度はモナドを失いながらも自身と仲間の力で自らのモナドを手に入れるのだが、2でゼノブレイドたる天の聖杯の力を引き出すにあたっては、単に主人公がホムラ・ヒカリの強大な力の存在を許し、受け入れるだけで済んでしまう。
この際、ホムラ・ヒカリはその力の実態や暴走がもたらす悲劇的な結末を主人公にきちんと示しておらず、主人公が理解した様子も見られない。なにせ、ここで主人公に対して紹介したホムラヒカリの力の源は、最終的に敵に乗っ取られ、それでもホムラヒカリの能力行使にはなんの影響もなかったのだから。よって、この一連の流れでは主人公の覚悟も伺えず、なんとなく主人公とヒロインがイチャついた結果、望んだことを望んだままに発現させるという完全チート能力に目覚める、というなんとも興ざめな展開になってしまう。
これはあくまで1つの例だが、シナリオを振り返ってみると粗雑な部分が相当数見え隠れしており、いちいち没入を阻害してくる。中途半端な下ネタを随所に挟んでくるのもマイナスだ。カットシーンの音楽と演出で相当程度ごまかせてはいるものの、初代ゼノブレイドには遠く及ばないだろう。これはシナリオに限った話ではないが、2017年のホリデーに間に合わせる必要があったことから、細かい粗を消し切るほどの時間的余裕が取れなかったのだと推察される。
さて、2だが、主人公には特殊な能力は何もない。特殊能力を持っているのはブレイドの方だ。しかし、ブレイドの持つ能力がバトルシステムに組み込まれているかというと、まったくそんなことはない。例えば、最強のブレイドであるヒカリは、因果律予測というビジョンに似た能力を持ち、敵の動きを予測することができる。これが戦闘でどう実装されているかというと、単に戦闘中の回避率が上がるのである。一事が万事こんな感じで、多くのブレイドが持つ多様な能力は、だいたいは単なるステータスアップ能力として実装されている。別に悪くはないが、初代と比べるとなんとも手抜きだな、と思わずにはいられない。
では2のバトルにおける特徴的な要素は何かというと、ブレイドコンボとフルバーストと呼ばれる属性攻撃がそれにあたる。ブレイドコンボとは、ブレイドが繰り出す属性攻撃を決まった順に当てるというもので、3つ当ててルートを完走すれば追加ダメージを与えるとともに、相手にフィニッシュ属性の玉を付与できるというもの。この玉はその属性に対して耐性ができていることを示すが、チェインアタックと呼ばれる連携攻撃を起動して、反対属性の攻撃を当てれば割ることができる。玉を割れば割るほど連携攻撃の回数が増えるとともにバーストゲージも増加し、バーストゲージが満タンになるとフルバーストと呼ばれる全員攻撃が始まって、ラスボスを含むほとんどの敵を一撃で倒すことができる。
何のことかわからないと思う。私も説明はできるが、これが一体何をさせられているのかわからない。なぜ玉がつくのか。玉を割ったら連携回数が増えるのはなぜなのか。バーストゲージとは何なのか。フルバーストになると全員攻撃できるのはなぜなのか。まったくわからない。とりあえずすさまじく強いので、結果的に戦闘ではいろんな属性のブレイドをバランスよく装備して、ひたすら属性攻撃を当ててたくさん玉をつけ、チェインを起動して一撃で殺す、という流れになる。解法が決まったパズルゲームみたいな感じだ。玉割りバトルと揶揄されることもある。極めればこれより強い戦い方もあるのだが、大抵の人はこの戦い方が一番楽で強い。あの初代のバトルシステムが、なぜこんな風になってしまうのか?私にはわからない。
2にも街の発展要素は一応残されてはいる。街に発展レベルが設定されており、レベルが上がると商品が安くなったり、クエストが追加されたりする。ただし、発展しても街の様子はまったく変化がないし、キズナグラムがあるわけでもないため、NPCにもほとんど変化がない。発展度はガチャで入手したブレイドの主要な用途である傭兵団クエストと密接に関連するため、傭兵団システムを成立させるために単なるステータスの1つに落とし込まれてしまった、という印象。フィールドスキルと同様、ブレイドシステムの犠牲になったのだろう。
2ではこういった要素は一切存在しない。このため、個々のNPCへの愛着は大幅に失われ、大量に存在するおつかいクエストもなんとも味気ないものとなってしまった。
キズナグラム実装は面倒だとは思うが、世界に浸りたいプレイヤーにとっては非常に重要な要素なので、次作では是非実装してほしいものだ。黄金の国イーラではヒトノワという形で簡易的に実装されていたが、あれではやはり人同士の関係や変化を把握することは難しい。より良い形を模索しているのだとは思うが、ベースは初代のキズナグラムで良いと思う。
一方2では、クエストをクリアして街を発展させても街にほとんど変化はないし、NPCの悩みを解決してもキズナグラムがないため変化が見えにくい。初代と同様に人間関係が連鎖して変化していく部分はあるのだが、似たような顔と名前の人物が大量にいるため、誰が誰だったかよくわからなくなってしまうのだ。結果として、ひたすら目の前の人の頼み事を聞いて解決し、報酬としてしょぼいコアやアイテムを貰うという、ダメなRPGにつきものの苦痛でしかないプレイ体験となってしまったように思う。
こうしてキズナが深まると、武器強化アイテムの生成で成功率が上がるほか、チェインアタックの連携成功確率が上昇し、飛躍的に攻撃力が高まることになる。3人の力を結集して敵を攻撃するチェインアタックがキズナの力で強くなるのも非常に自然で、クエストパートで深めた親交がバトルに反映されることで、退屈になりがちな会話イベントやクエストのモチベーションの維持にも役立っていたと思う。
2ではこうしたプレイヤーキャラクター同士の親密度は一切存在せず、クラフトやバトルへも影響しないため、いろんなキャラの組み合わせでバトルするモチベーションも湧きづらく、キズナトークも単なるショボい会話イベントに成り下がってしまっている。このため、2では固定パーティーで最後までクリアしてしまい、控えは一切使わなかった人も多いのではないだろうか。
2でもキズナトークは用意されているが、初代に比べて1キャラクターあたりのキズナトーク数は大幅に少なくなっており、個々のキャラクターの掘り下げが浅くなってしまった。念のため言っておくと、2のキズナトークの総数はおそらく初代よりもかなり多い。しかし、その多くは30体以上存在するレアブレイドに割り当てられているため、キャラクターごとのトーク数は非常に少なくなってしまったわけだ。
キズナトークに限らずゼノブレイド2全般で言えることだが、大量のレアブレイドに開発リソースを割いた結果、個々の要素が浅く、薄くなる傾向が強く見られる。濃密な世界を描いてきたゼノシリーズで、こうした方針が果たして合っていたのか、疑問の残るところである。
2では、そもそも装備品は武器とアクセサリーしか存在しない。武器は見た目に反映されるが、アクセサリーは一部の衣装変更専用装備を覗いて見た目には反映されないため、初代のような楽しみ方はまったくできなくなってしまった。
2では報酬どころか図鑑要素もなくなってしまった。
2ではそもそも防具がなくなっているため、アクセサリを考慮してもカスタマイズ範囲は減っている。その分武器はブレイドのコアチップとアシストコアを選択できるため、多少カスタマイズ範囲が広がっている。また、カスタマイズとは異なるが、ブレイド自体もキズナリングによって成長するため、装備品の成長という観点では2の方が高いといえるかもしれない。
2ではプレイヤーキャラクター固有の能力はなく、運用はほぼブレイドの武器種(≒ロール)で決まってしまうため、普通にストーリーを進める分には誰を使ってもプレイ感覚はほぼ同じになってしまう。キャラではなくロール(タンク、アタッカー、ヒーラー)のどれかを動かしている感覚が強く、一部特殊なブレイドや装備を使う時には専用の運用をする、といった感じだ。多少やり込んだ程度だと、クリティカル特化ヒカリによるリキャスト瞬間回復+自動回復によるゴリ押しぐらいしか印象に残らなかった。一応ホムラヒカリだけは主人公にしかつけられないからね…。
個人的にこうした方向の作品は、ゼノブレイド2ではなくゼノブレイド外伝で良かったのではないか、という気がしてならない。
そして大量の物量の代償か、個々の要素は薄くなり、完成度は低下し、没入感も損なわれてしまった。Metacriticのスコアは次のようになっている。
決して悪くはないのだが、未完成品と言われ、1,000円で叩き売られたクロスを下回ってしまったのは残念だ。
初代ゼノブレイドは世界中のレビューを集めたMetacriticのレビュースコア(メタスコア)で92点という高得点を叩き出しており、Wiiのタイトルでは唯一のプラチナ評価と、客観的に見ても非常に高評価を得た作品と言ってよいだろう。
傑作ゼノブレイドの正統続編
ゼノブレイド2は、ゼノブレイドの正統な続編と位置づけられるタイトルだ。ナンバリングなんだから当然だろう、と思われがちだが、ゼノブレイドにはゼノブレイドクロスというWiiU向けの続編タイトルが存在しており、ナンバリング化されるかはかなり不透明だった。ゼノブレイドクロスはゼノブレイドのシステムをベースとしながらもマルチプレイ対応のオープンワールドRPGへと舵を切った作品で、主人公が無言のアバターになり、ストーリーへの介入がほとんどなくなったこと、演出が非常に蛋白になったこと、音楽のテイストが大きく変わったこと、何よりストーリー自体も薄くなり、打ち切りのような唐突なエンディングを迎えたことから賛否両論が大きく分かれることとなった。とはいえ、地形デザインやオープンワールドとしてのシステムの完成度は現在でも匹敵するものは数少ないと言われるほど素晴らしく、人間形態で1つの惑星全体をシームレスに移動できるだけでなく、ドールと呼ばれるロボットに搭乗することにより、陸上のみならず空中を高速飛行することまで可能だった。また、独特の地形デザインはもはやモノリスの代名詞と言えるレベルまで高められており、他社タイトルでその特徴的な地形が模倣されることもしばしばだった。
海外ではシステム面が評価されてそれなりに好評、日本ではストーリーを評価して不評となり、メタスコアは84点という結果となった。ただ、セールス面ではWiiU自体の普及が思わしくなかったこともあり、成功を収めたとは言い難い。ゲームショップでは1,000円前後で叩き売られることとなり、少なくとも日本では若干黒歴史のような位置づけになってしまった。
ゼノブレイド2をゼノブレイド XXXX ではなくナンバリングとしたのは、一度シリーズを仕切り直してストーリー、キャラクター、演出を重視し、ゼノブレイドをIPとして立て直す意図もあったのではないかと思う。
捻れた経緯が生んだ様々な期待と評価
このように様々な不安と期待が交錯する微妙な成り立ちを持つ作品であるため、作品単体としてだけでなく、ゼノブレイドシリーズとして以下のように様々な観点から評価されることになったのがゼノブレイド2という作品だ。- 単体の大作JRPG作品
- ゼノブレイドシリーズ最新作としてのゼノブレイド2
- ストーリー重視の傑作RPGゼノブレイド1の続編として
- システム重視の意欲作ゼノブレイドクロスの続編として
- ゼノブレイド1のストーリーとゼノブレイドクロスのシステムを融合させたゼノブレイドシリーズの最新作として
単体のJRPG大作としてのゼノブレイド2
まずはシリーズの成り立ちを忘れて作品単体として見てみると、現在としては数少ない大作JRPG作品であり、一般的なJRPGの水準を十分に上回る作品であることは疑いがない。クリアまで60時間~、やりこみを含めると200時間をゆうに超える超ボリュームを持ちつつ、システムや音楽、演出、ストーリーが大きな破綻なくまとまった良作といって構わない出来だろう。昨今このレベルを目指して作られた作品はほとんどなく、SFC時代の名作RPG群を技術の進歩に沿う形で正統進化させた姿に非常に近いのがこの作品だ。その完成度や人気はともかくとして、目指すレベルとしては歴史の長い著名な中堅JRPG群はもちろん、システムの進化を完全に放棄しているドラクエ11も上回るものだ。ゼノブレイドシリーズ最新作としてのゼノブレイド2
こうした高い意欲と物量から良評価がなされる反面、ゼノブレイドシリーズ最新作としてのゼノブレイド2は期待外れな点が多かったのは否めない。そのため、過去シリーズのファン、特に初代ゼノブレイドの熱心なファンからは不満が噴出することとなってしまった。これは、過去のゼノブレイドシリーズが持っていた長所の多くを捨て去ってしまったからだろう。冒頭に述べた内容と若干重複するが、ゼノブレイドシリーズの魅力・長所をざっと挙げ、それらが2でどうなったかを見ていく。ゼノブレイド
- シームレスに移動可能な広大なフィールドを自由に探索できる
- エンカウントからシームレスに移行してリアルタイムで展開されるバトル
- 探索によりマップを完成させていく楽しみがある
- 生態系を感じさせる多様なモンスター
- 数々のネームドモンスターがもたらす偶発性の高い死闘
- 序盤から引き込まれるシナリオ
- 没入感の高い演出
- 素晴らしい音楽
- 世界やキャラクターの設定と融合した独自の戦闘システム
- SFと古代思想が融合した独特の世界設定
- 街(コロニー)の発展要素
- キズナグラム(NPC)によるNPC同士の複雑な関係性の構築と可視化
- NPC同士の関係の変化や街の復興に影響を与えることで世界に働きかけるクエスト群
- キズナシステム(PC)によりプレイヤーキャラクター同士の関係性をバトルやクラフトへ反映
- キズナトークによるプレイヤーキャラクター同士の関係の掘り下げ
- 装備品をカットシーン含む全編で見た目に反映
- コレペディア(アイテム図鑑+報奨システム)によりコレクターや探索好きをモチベート
- ジェムクラフトによる装備性能の豊富なカスタマイズ
- 固有スキル・能力により個々のキャラクターごとに全く異なるプレイフィールを実現
ゼノブレイド クロス
- 完全シームレスの超広大なマップ
- ロボットへの搭乗による世界の高速移動
- ロボットのカスタマイズ
- ロボット搭乗による怪獣大決戦バトル
- マルチプレイ協力ミッション、バトル
ゼノブレイドシリーズの魅力がゼノブレイド2でどうなったか
先に述べたゼノブレイドシリーズの魅力がゼノブレイド2でどうなったのか、表形式で整理する。すべて記載すると長くなるため、表での記載は表現を短縮している。魅力・長所 | ゼノブレイド2での扱い | |
1 | フィールド探索 | △ |
2 | リアルタイムバトル | ○ |
3 | 探索&マッピング | × |
4 | モンスター生態系 | ○ |
5 | ネームドモンスター | ◎ |
6 | シナリオ | △ |
7 | 演出 | ○ |
8 | 音楽 | ○ |
9 | 戦闘システム | × |
10 | 世界設定 | ○ |
11 | 街の発展 | △ |
12 | キズナグラム | × |
13 | 世界に影響するクエスト | × |
14 | キズナシステム | × |
15 | キズナトーク | △ |
16 | 装備見た目反映 | × |
17 | コレペディア | × |
18 | 装備カスタマイズ | △ |
19 | 戦闘でのキャラ差別化 | × |
20 | 完全シームレスマップ | × |
21 | ロボット高速飛行 | × |
22 | ロボットカスタマイズ | △ |
23 | ロボットバトル | × |
24 | マルチプレイ | × |
どうだろうか。ロボ関連の21~24は作品の方向性が違うから置いておくとしても、20個あった魅力・長所のうち、改善されたのは1つ、概ね維持されたのは5つ、劣化したものは5つ、消滅したものは9つである。以下、詳しくみていこう。
△:シームレスに移動可能な広大なフィールドを自由に探索できる
フィールドの出来自体は基本的にはかなり良い。ではなぜ△かというと、ひとえにフィールドスキルシステムが導入されたせいだ。フィールドスキルとは、フィールド上に大量に存在する進行不能な障害物や開錠不能な宝箱等を解除するための専用スキルで、これが必要レベルに満たない限り先に進めなかったり、宝箱が取得できなかったりする。これはゼノブレイドクロス時代に導入されてあまり評判が良くなかったはずだが、なぜかゼノブレイド2でさらに強化されて導入されてしまった。フィールドスキルはプレイヤーキャラクターではなく、ゲーム内ガチャ等で入手するブレイド(人格を持った武器キャラクター)が持っており、たくさんブレイドを集めるほど障害物を解除しやすくなるシステムとなっている。ゼノブレイドシリーズでは、桁外れの強さを持つ敵の目をかいくぐりながら、広大なフィールドを探索していくワクワク感が大きな魅力の1つになっていた。ステルスと逃亡を繰り返せば、シームレスエリア内ならどこにだっていけるし、思いもかけない敵や宝に出会うこともあった。しかし、フィールドスキルはその全てとは言わないまでも、ほとんどを破壊してしまった。好奇心に導かれて探索しても、あちこちで通行止めを食らってしまうし、せっかく見つけた宝箱も開かない。フィールドスキルの種類は10種類以上もあり、要求レベルも最大8程度とかなり面倒くさく、いつ頃に到達できるかもはっきりわからない。こうした障害物がエリアごとに十数個は存在しており、アイテムや地形を収集するためには進めなかった場所を覚えておき(マップには記録される)、再度訪れてまわる必要がある。それはもはや、探索ではなく作業である。
また、フィールドスキルを発動するためには単にスキルを持ったブレイドを保有しているだけではダメで、場合によっては100体を超えるブレイドの中から必要スキルを持つブレイドを探し出し、装備し直す必要がある。同時に2~3種類のフィールドスキルを求められることも珍しくなく、6~9の装備枠に対して2~3種のスキルがそれぞれ2~8レベルを超えるように探して装備することになる。この際には戦闘用に装備したブレイドをいったん外さなくてはならないが、フィールドスキル用のブレイドはたいてい雑魚なので、障害突破後にはまた戦闘用に戻すことになる。その先で再びフィールドスキルが必要になると、また同じことを繰り返すのだ。
しかも、障害物がフィールドスキルの発動で消え失せるタイプならまだ良いが、ジャンプしたり潜ったりするタイプだとそこを通るために何度もスキルを発動させなくてはいけない。ダンジョンで迷っている時などは同じ場所で何度も付け替えることもある。これではとても探索を楽しむどころではない。おそらく、今作の目玉であるガチャで集めるブレイドシステムのありがたみを増すために強化・導入したのだろうが、完全に失敗だと思う。せめて手持ちのブレイドと装備可能枠からシステムに自動判定させるべきだった。
◯:エンカウントからシームレスに移行してリアルタイムで展開されるバトル
これは初代、クロスから変わらずうまく出来ている。さすがに今どき3Dフィールドでシームレスにバトル移行できないゲームは時代遅れに感じる。×:探索によりマップを完成させていく楽しみがある
フィールドスキルと合わせて探索の楽しみを大幅に奪って不評だったのがこれだ。初代はエリア到達してもマップが全開放されるわけではなく、実際に自分が足を踏み入れた範囲が徐々にマッピング(地図に反映)されていくシステムになっていた。これにより、魅力的なフィールドを隅々まで探索して地図を完成させながらアイテム、敵、変わった地形、ロケーション、ランドマークを探すのが非常に楽しかった。しかしながら本作では、地図に対応するエリアに一歩侵入した瞬間、地図の地形が全開放される。ロケーションやランドマークはさすがに表示されないが、これだけで探索の意欲は十分に減ってしまう。また、地図システム自体の出来も非常に悪かった(アップデートで多少改善された)のも問題だった。何しろ発売当初は自分がどこにいるのかほとんどわからず、探索を断念してフィールド上の3Dマーカーを追うことに専念するプレイヤーが続出したほどだ。これは、発売当初のAmazonレビューを見ればよくわかるだろう。
さらに、変更されてはじめて気づいたことだが、踏破していない場所まで勝手に地図が開放されてしまった場合、まだ行っていない場所がどこなのかがまったくわからないのだ。これは、クエストや素材集めの進行で困った際に特に問題となる。広大なフィールドを行ったことのある場所も含めて虱潰しにする経験は、控えめに言っても不快なものであった。
◯:生態系を感じさせる多様なモンスター
ロケーションに応じてそこに暮らしていそうなモンスターが群生し、リーダー的なネームドモンスターが配置されている様は、初代やクロスから変わらず魅力的だ。◎:数々のネームドモンスターがもたらす偶発性の高い死闘
こちらも基本的には初代、クロスと変わらず。知らぬ間に死角から到来して味方に大打撃を加え、音楽が切り替わるとともに死闘がはじまるのはゼノブレイドシリーズの大きな醍醐味だ。偶発性とは関係がない点だが、ネームドモンスター討伐後も墓を調べることで何度でも再戦できるようになったのは非常に良い変更点と思う。△:序盤から引き込まれるシナリオ
初代ゼノブレイドも含むネタバレ注意。前作のシナリオは、序盤で故郷が蹂躙され、故郷を守ろうとした幼馴染は衝撃的な死を遂げ、仇の機神兵を滅ぼすため、機神界に向けて旅立つというものだった。襲撃では自身の無力さを思い知らされるものの、神剣モナドの能力の一端として未来視(ビジョン)に目覚める。全く歯が立たなかった仇の機神兵をいつか打ち倒すべく、モナドを使いこなすための長い旅もまた同時に始まるわけだ。対する2では、まず冒険の動機がいまいちはっきりしない。冒頭であっさり殺されヒロインに命を救われた主人公は、ヒロインが望む世界樹の頂上「楽園」を目指して様々な国を渡り歩きながら、出会い、敵対、戦闘、和解、別れを繰り返していくというのが大きな流れだが、ヒロインが楽園を目指す理由は物語終盤まで明かされることはない。主人公は、緩慢に滅びを迎えつつある世界が楽園に行けば救われるのではないか、という特に根拠もない淡い考えは持っているものの、基本的にはヒロインに頼まれたから目指している。
まぁ、これはまだいい。動機がなんであれ、旅の過程で絆を築き、試練を超え、成長してくれれば。しかし、ゼノブレイド2ではそこもいまひとつだ。例えばタイトルにもなっているゼノブレイド…これは初代では神剣モナドを指し、2では天の聖杯と呼ばれる最強のブレイド、ホムラ・ヒカリを指す。初代では、モナドの力を使いこなすために少しずつ試練を乗り越え、一度はモナドを失いながらも自身と仲間の力で自らのモナドを手に入れるのだが、2でゼノブレイドたる天の聖杯の力を引き出すにあたっては、単に主人公がホムラ・ヒカリの強大な力の存在を許し、受け入れるだけで済んでしまう。
この際、ホムラ・ヒカリはその力の実態や暴走がもたらす悲劇的な結末を主人公にきちんと示しておらず、主人公が理解した様子も見られない。なにせ、ここで主人公に対して紹介したホムラヒカリの力の源は、最終的に敵に乗っ取られ、それでもホムラヒカリの能力行使にはなんの影響もなかったのだから。よって、この一連の流れでは主人公の覚悟も伺えず、なんとなく主人公とヒロインがイチャついた結果、望んだことを望んだままに発現させるという完全チート能力に目覚める、というなんとも興ざめな展開になってしまう。
これはあくまで1つの例だが、シナリオを振り返ってみると粗雑な部分が相当数見え隠れしており、いちいち没入を阻害してくる。中途半端な下ネタを随所に挟んでくるのもマイナスだ。カットシーンの音楽と演出で相当程度ごまかせてはいるものの、初代ゼノブレイドには遠く及ばないだろう。これはシナリオに限った話ではないが、2017年のホリデーに間に合わせる必要があったことから、細かい粗を消し切るほどの時間的余裕が取れなかったのだと推察される。
◯:没入感の高い演出
イマイチなシナリオをかなり補っているのがカットシーンの音楽と演出だ。初代ではアニメ関係者を起用したと聞いているが、2も初代に負けず劣らずのクオリティとなっている。特にアクションシーンの出来はかなりのもので、剣戟を交えた激しい戦いが繰り広げられる。◯:素晴らしい音楽
初代の素晴らしい音楽を手がけた面々が再集結して作り出された音楽は、初代に比肩するものだ。カットシーンを盛り上げるドラマティックな音楽だけでなく、フィールドや街の音楽も素晴らしい。バトルの音楽がエリアごとに変わっていくのも気分を盛り上げてくれる。音楽の力だけで、このゲームの魅力は倍以上になっていると言っても過言ではないと思う。×:世界やキャラクターの設定と融合した独自の戦闘システム
初代ゼノブレイドでプレイヤーに驚きを与えた、戦闘中に未来視(ビジョン)により回避すべき最悪の未来が見える独特のバトルシステム。モナドの盾や鎧、加速等の力で最悪の未来を打ち破れば、パーティーのテンションを上げ、戦闘の流れ自体を大きく変えていくことができる。モナドの能力はこの世界の成り立ちそのものと密接に結びついているため、バトルが世界設定や主人公の設定上の能力をシステムレベルで取り込んでいることになる。設定上の能力がちょっとしたスキルとして実装されている例は枚挙に暇がないが、バトルシステムの根幹にまで組み込んでいる例は数えるほどしかないだろう。さて、2だが、主人公には特殊な能力は何もない。特殊能力を持っているのはブレイドの方だ。しかし、ブレイドの持つ能力がバトルシステムに組み込まれているかというと、まったくそんなことはない。例えば、最強のブレイドであるヒカリは、因果律予測というビジョンに似た能力を持ち、敵の動きを予測することができる。これが戦闘でどう実装されているかというと、単に戦闘中の回避率が上がるのである。一事が万事こんな感じで、多くのブレイドが持つ多様な能力は、だいたいは単なるステータスアップ能力として実装されている。別に悪くはないが、初代と比べるとなんとも手抜きだな、と思わずにはいられない。
では2のバトルにおける特徴的な要素は何かというと、ブレイドコンボとフルバーストと呼ばれる属性攻撃がそれにあたる。ブレイドコンボとは、ブレイドが繰り出す属性攻撃を決まった順に当てるというもので、3つ当ててルートを完走すれば追加ダメージを与えるとともに、相手にフィニッシュ属性の玉を付与できるというもの。この玉はその属性に対して耐性ができていることを示すが、チェインアタックと呼ばれる連携攻撃を起動して、反対属性の攻撃を当てれば割ることができる。玉を割れば割るほど連携攻撃の回数が増えるとともにバーストゲージも増加し、バーストゲージが満タンになるとフルバーストと呼ばれる全員攻撃が始まって、ラスボスを含むほとんどの敵を一撃で倒すことができる。
何のことかわからないと思う。私も説明はできるが、これが一体何をさせられているのかわからない。なぜ玉がつくのか。玉を割ったら連携回数が増えるのはなぜなのか。バーストゲージとは何なのか。フルバーストになると全員攻撃できるのはなぜなのか。まったくわからない。とりあえずすさまじく強いので、結果的に戦闘ではいろんな属性のブレイドをバランスよく装備して、ひたすら属性攻撃を当ててたくさん玉をつけ、チェインを起動して一撃で殺す、という流れになる。解法が決まったパズルゲームみたいな感じだ。玉割りバトルと揶揄されることもある。極めればこれより強い戦い方もあるのだが、大抵の人はこの戦い方が一番楽で強い。あの初代のバトルシステムが、なぜこんな風になってしまうのか?私にはわからない。
◯:SFと古代思想が融合した独特の世界設定
ゼノブレイドを含むゼノシリーズは、高橋ソーカントクの好きなSFと、グノーシス主義と呼ばれる現世界を否定する独特の思想を融合させたものとなっている。中世ファンタジーやスチームパンク、近未来を舞台とした作品は数多いが、ゼノシリーズは近未来的世界観にグノーシス主義的モチーフを持ち込むことで、独特の色付けに成功している。この世界観は初代に続いて2でも踏襲されており、終盤ではおどろくべき世界のつながりが明かされることになる。△:街(コロニー)の発展要素
最近のゲームの多くに取り入れられている街の開拓・発展要素。初代では壊滅したコロニー6の復興として、数々のクエストをこなすことで徐々にコロニーの再建が進み、住人が増え、商品が充実し、住人同士のキズナが発生し、それがさらにクエストを有む…といった形で非常にうまく機能していた。2にも街の発展要素は一応残されてはいる。街に発展レベルが設定されており、レベルが上がると商品が安くなったり、クエストが追加されたりする。ただし、発展しても街の様子はまったく変化がないし、キズナグラムがあるわけでもないため、NPCにもほとんど変化がない。発展度はガチャで入手したブレイドの主要な用途である傭兵団クエストと密接に関連するため、傭兵団システムを成立させるために単なるステータスの1つに落とし込まれてしまった、という印象。フィールドスキルと同様、ブレイドシステムの犠牲になったのだろう。
×:キズナグラム(NPC)によるNPC同士の複雑な関係性の構築と可視化
初代ゼノブレイドでは、NPC同士の現在の関係を表したキズナグラムというシステムがあった。小説や漫画の登場人物紹介のようなものを想像してもらうとわかりやすいと思う。誰と誰が仲が良くて、誰と誰が対立していて、誰が誰のことを好き、みたいなことが記された図だ。これが、クエストをこなすことで徐々に変化していくのだ。知らなかった人同士につながりが生まれ、クエストの選択によっては仲がこじれたり、仲直りしたり、誰かが死んでしまったりする。これがあることで、街と住民に強い愛着が生まれ、世界に干渉し、世界で生きているという感覚が生まれてくる。2ではこういった要素は一切存在しない。このため、個々のNPCへの愛着は大幅に失われ、大量に存在するおつかいクエストもなんとも味気ないものとなってしまった。
キズナグラム実装は面倒だとは思うが、世界に浸りたいプレイヤーにとっては非常に重要な要素なので、次作では是非実装してほしいものだ。黄金の国イーラではヒトノワという形で簡易的に実装されていたが、あれではやはり人同士の関係や変化を把握することは難しい。より良い形を模索しているのだとは思うが、ベースは初代のキズナグラムで良いと思う。
×:NPC同士の関係の変化や街の復興に影響を与えることで世界に働きかけるクエスト群
街の発展やキズナグラムで述べたこととほぼ重複するが、初代のクエストはその進行を通して街が発展したり、NPC同士の関係がキズナグラム上で変化していき、ひいては世界そのものを変化させている、という感覚を得ることができた。これによって、言ってしまえばつまらないおつかいクエストであっても比較的楽しんでプレイすることができた。一方2では、クエストをクリアして街を発展させても街にほとんど変化はないし、NPCの悩みを解決してもキズナグラムがないため変化が見えにくい。初代と同様に人間関係が連鎖して変化していく部分はあるのだが、似たような顔と名前の人物が大量にいるため、誰が誰だったかよくわからなくなってしまうのだ。結果として、ひたすら目の前の人の頼み事を聞いて解決し、報酬としてしょぼいコアやアイテムを貰うという、ダメなRPGにつきものの苦痛でしかないプレイ体験となってしまったように思う。
×:キズナシステム(PC)によりプレイヤーキャラクター同士の関係性をバトルやクラフトへ反映
初代には、NPC向けのキズナグラムと対を成す形で、プレイヤーキャラクター同士のキズナグラムも存在していた。プレイヤーキャラクターの間にキズナと呼ばれる親密度のようなものがあり、クエスト中の会話や、戦闘中の補助行動、キズナトークと呼ばれる専用イベントの選択によって増加していく。特に、戦闘中に励ましたり倒れた仲間を助け起こすとキズナが増えていくのは非常に自然な組み込み方だし、ともに死闘を重ねることでキズナが強くなっていくのは納得度が高いものだった。こうしてキズナが深まると、武器強化アイテムの生成で成功率が上がるほか、チェインアタックの連携成功確率が上昇し、飛躍的に攻撃力が高まることになる。3人の力を結集して敵を攻撃するチェインアタックがキズナの力で強くなるのも非常に自然で、クエストパートで深めた親交がバトルに反映されることで、退屈になりがちな会話イベントやクエストのモチベーションの維持にも役立っていたと思う。
2ではこうしたプレイヤーキャラクター同士の親密度は一切存在せず、クラフトやバトルへも影響しないため、いろんなキャラの組み合わせでバトルするモチベーションも湧きづらく、キズナトークも単なるショボい会話イベントに成り下がってしまっている。このため、2では固定パーティーで最後までクリアしてしまい、控えは一切使わなかった人も多いのではないだろうか。
△:キズナトークによるプレイヤーキャラクター同士の関係の掘り下げ
ゼノブレイドシリーズでは、世界の各所にキズナトークと呼ばれるプレイヤーキャラ同士の専用会話イベントが用意されている。キャラクター同士の関係性を掘り下げて描写することで、互いの関係性だけでなく、個々のキャラクターの性格や考えがより強く浮かび上がってくるようになっている。2でもキズナトークは用意されているが、初代に比べて1キャラクターあたりのキズナトーク数は大幅に少なくなっており、個々のキャラクターの掘り下げが浅くなってしまった。念のため言っておくと、2のキズナトークの総数はおそらく初代よりもかなり多い。しかし、その多くは30体以上存在するレアブレイドに割り当てられているため、キャラクターごとのトーク数は非常に少なくなってしまったわけだ。
キズナトークに限らずゼノブレイド2全般で言えることだが、大量のレアブレイドに開発リソースを割いた結果、個々の要素が浅く、薄くなる傾向が強く見られる。濃密な世界を描いてきたゼノシリーズで、こうした方針が果たして合っていたのか、疑問の残るところである。
×:装備品をカットシーン含む全編で見た目に反映
初代やクロスでは、装備品の見た目がフィールド、バトルだけでなくカットシーンにもすべて反映されていた。これのせいでシリアスなカットシーンがほとんどギャグのようになってしまうこともあったが、逆にそれが各プレイヤーだけのキャラクターの個性となって強く記憶に残ることにもなっていた。また、多少弱い装備でも見た目が気に入ったものを使ったり、組み合わせでコーディネートを楽しむこともできた。2では、そもそも装備品は武器とアクセサリーしか存在しない。武器は見た目に反映されるが、アクセサリーは一部の衣装変更専用装備を覗いて見た目には反映されないため、初代のような楽しみ方はまったくできなくなってしまった。
×:コレペディア(アイテム図鑑+報奨システム)によりコレクターや探索好きをモチベート
コレペディアは、エリアごとに用意されたアイテム図鑑であり、特定の種類をコンプリートしたり、エリア全体をコンプリートすると報酬がもらえるものだ。これにより、マップ制覇とあわせて探索のモチベーションが上がり、コレペディアが完成すれば、以後のクラフトやクエストでアイテム収集でも役に立つ、となかなか優れたシステムだった。2では報酬どころか図鑑要素もなくなってしまった。
△:ジェムクラフトによる装備性能の豊富なカスタマイズ
初代では、ジェムと呼ばれる特殊効果付与アイテムを武器や防具に取り付けることで、装備性能をカスタマイズすることができた。2ではそもそも防具がなくなっているため、アクセサリを考慮してもカスタマイズ範囲は減っている。その分武器はブレイドのコアチップとアシストコアを選択できるため、多少カスタマイズ範囲が広がっている。また、カスタマイズとは異なるが、ブレイド自体もキズナリングによって成長するため、装備品の成長という観点では2の方が高いといえるかもしれない。
×:固有スキル・能力により個々のキャラクターごとに全く異なるプレイフィールを実現
初代にはタレントアーツという各キャラ固有の能力があり、通常アーツの重複も少なかったため、各キャラクターを操作した際の感覚はかなり異なっていた。鉄壁の壁役ライン、モナド発動によってアーツが完全に入れ替わり、補助と攻撃で未来を変えるシュルク、緻密なエレメント操作とエレメントバーストで支援・治癒・破壊を併せ持つメリア、脱げば脱ぐほど強くなり、回避と連撃で無双するダンバン、謎のアーツで盾・デバフ・範囲回復を兼任し、パーティーの生存力を飛躍的に高める万能の勇者リキとかなり印象に残っている。カルナはすぐ死んでた印象しかない。2ではプレイヤーキャラクター固有の能力はなく、運用はほぼブレイドの武器種(≒ロール)で決まってしまうため、普通にストーリーを進める分には誰を使ってもプレイ感覚はほぼ同じになってしまう。キャラではなくロール(タンク、アタッカー、ヒーラー)のどれかを動かしている感覚が強く、一部特殊なブレイドや装備を使う時には専用の運用をする、といった感じだ。多少やり込んだ程度だと、クリティカル特化ヒカリによるリキャスト瞬間回復+自動回復によるゴリ押しぐらいしか印象に残らなかった。一応ホムラヒカリだけは主人公にしかつけられないからね…。
×:完全シームレスの超広大なマップ
これはオープンワールドに舵を切ったクロスにあった魅力。あわよくばクロスのマップと初代のストーリーを…と思ったが、どちらも叶うことはなかった。ストーリードリブンなゲームと完全シームレスマップの相性の悪さは理解できるので、過ぎた望みとも思う。△:ロボット関連
2には搭乗可能なロボットは登場しないが、ゲームの良し悪しというわけではないので特に問題ない。ロボのカスタマイズ要素に若干近いものは、ハナのカスタマイズとして残っている。×:マルチプレイ
まぁこれも別になくていいかなぁ…。ゼノブレイド2独自の魅力
このように、2は初代の正統続編の位置づけでありながら、システム面ではかなり方向性の異なる作品だ。では2独自の魅力がないかというと、そんなことはない。それは一体何なのかといえば、様々な有名イラストレーターが描く30体を超える魅力的なレアブレイドと、そこに付随する育成要素、ブレイドクエスト、キズナトークに尽きる。逆に言えば、ゼノブレイド2はそのすべてをレアブレイドの物量に注ぎ込んだ作品と言える。この点が気に入るプレイヤーには大満足の作品となるだろう。個人的にこうした方向の作品は、ゼノブレイド2ではなくゼノブレイド外伝で良かったのではないか、という気がしてならない。
そして大量の物量の代償か、個々の要素は薄くなり、完成度は低下し、没入感も損なわれてしまった。Metacriticのスコアは次のようになっている。
決して悪くはないのだが、未完成品と言われ、1,000円で叩き売られたクロスを下回ってしまったのは残念だ。
私的レビュー要約
所感
- 広いフィールド、シームレスバトル、魅力的な演出、リアルタイムバトル等、JRPGとしては出色の力作
- ただし、非常に高い完成度を誇った初代ゼノブレイドと比べた場合、多くの点で物足りない
- 従来シリーズで好評だった要素は形だけ残しつつも内容を薄め、かわりに物量を投下した作品
- 光る要素を数多く持ちながら、脚本、システム、品質とあらゆる部分で粗が目立つ
- ホリデーシーズンの発売に間に合わせるため、品質を犠牲にしたことを感じさせられる
- 半年~1年ほど多く時間をかけ、脚本やシステムを練る時間があれば初代に匹敵する偉大な作品となれたかもしれない
Pros
- 従来シリーズに勝るとも劣らない美しい音楽
- 多数のブレイド(人格を持った武器)の入手、育成、クエストがもたらす多くのやりこみ要素
- 引き込まれる演出と世界設定
- 多様なキャラクターデザインをうまく再現したモデリング
Cons
- 探索の楽しさを台無しにするマップシステムやフィールドスキルによる妨害
- ちぐはぐで掘り下げ不足のメインキャラクターたち
- 街の発展やキズナグラムといった、世界そのものの存在感を補強してきたシステムの削除
- 不親切なユーザーインタフェース
- 世界設定と切り離された、複雑かつ意味不明なバトルシステム
結論
タイトルに示した疑問に対する私の結論は、非常にざっくりまとめれば次の二点になる。
- ゼノブレイドシリーズが持っていた長所の多くを薄め、捨ててしまったから
- 発売時期の関係か、あらゆる要素の磨き上げが不足していたから
繰り返しになるが、このゲームはJRPGとしては十分な良作だ。だが、傑作ゼノブレイドの正統続編として、初代を超える期待を背負って登場した作品としては、残念ながらその期待に応えきることはできなかった。
次回作は今度こそ初代ゼノブレイドを超えるゲームとなることを切に願う。
良作だとは思わないなぁ
返信削除探索面倒脚本最低演出過剰バトル超冗長
システムは前作のいいものを削ってソシャゲみたいな余計なものをゴチャゴチャ投入したどうしようもない駄作
金掛ければ体裁整う部分に金掛けましたってだけのゲーム
これで良作だという人は金掛かってれば何でも良作認定なんだろうなぁと思う